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2010-11-15 00:19

(連載)日本のTPPへの対応は国際的不信を招く(2)

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 我が国は、本来、米国をアジア太平洋の経済統合の枠組みに引き込む先導役を果たすべき立場にある。そのためにも、TPP推進の先頭に立ってしかるべきである。しかし、日本政府は、11月6日にEPAに関する関係閣僚委員会を開いて基本方針を決定したが、その中でTPPについては「関係国との協議を開始する」としただけで、参加の是非そのものについては来年6月に判断を先送りした。このような煮え切らない態度は、関係各国の不信を招くものである。

 基本方針では「TPPへの参加を前提条件としない協議をする」としているが、そのような予備的情報収集のようなことは、閣僚レベルで言うべき内容ではない。当然、事務レベルで済ませておくべきことである。

 米国の保守派シンクタンクであるヘリテージ財団のクリングナー研究員とチェン研究員は11月9日付で同財団のウェブサイトに『オバマ訪日で日本に期待し過ぎるな』と題する論文を掲載し、その中で「日本の民主党政権は、外交においては中露に対して臆病な姿勢を示し、経済の面でもTPPへの参加を決断できずにいる」と、早速批判している。ヘリテージ財団は日米同盟重視であり、クリングナー氏は知日派の論客の一人である。日本は、相変わらず知日派を失望させるようなことばかりやっている。

 日本のTPP参加問題は、国際政治経済上重要な案件であるにもかかわらず、農業保護を理由に与党内からも、自民党内からも、反対の声が湧きあがっている。こういう時だけ「超党派」というのでは困る。目先の農業保護が真の農業保護に繋がらないことは、これまでの経験から明白である。TPPに不参加となれば、我が国は政治的にも経済的にも国際的重要性を著しく低下させることになりかねない。今回のAPECの議長国は日本だが、首脳宣言でFTAAPへ至る道筋の一つとして、TPPが盛り込まれるのに、議長国自身がそれに及び腰であるというのは、奇異な光景であるとしか言いようがない。(おわり)
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