国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-11-22 22:40

(連載)オバマ大統領訪印で米印戦略提携関係はさらに強化(1)

河村 洋  NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 中間選挙での敗北からほどなくして、オバマ大統領は10日間のアジア歴訪に旅立った。ソウルでのG20と横浜でのAPECもさることならが、インドとの二国間会談は際立って重要であった。G20やAPECのように明確な合意形成もままならない多国間交渉ショーとは異なり、インドとの二国間会談では実のある具体的な戦略課題が議論されたからである。インドは新興市場としてだけでなく、アフガニスタン・パキスタン問題や核不拡散といった課題でも重要な国である。また、米中印という域内三大国の力のバランスも見逃せない問題である。11月6日から8日にかけての二国間会談を前にした11月5日に、ジョン・マケイン上院議員はカーネギー国際平和財団で米印関係に関する講演を行なった。

 マケイン氏は、演説を通して「アメリカとインドは民主主義という共通の価値観によって結ばれ、これが両国の戦略的提携関係のさらなる発展に重要な役割を担っている」と強調した。インドはアメリカにとって有望な新興市場以上に重要な国である。アフガニスタン・パキスタン問題は両国にとって死活的な課題である。マケイン上院議員は「アメリカがアフガニスタンから性急に撤退すれば、インドにはアメリカが対テロ戦争に消極的だと映るであろう」と述べた。ボブ・ウッドワード氏が自らの著書『オバマの戦争』で「オバマ大統領は心理的にアフガニスタンから撤退している」と語っているので、これは重要な点である。実際に、オバマ大統領は、リスボンでのNATO首脳会議で「2014年までにアフガン戦線から撤退する」という期限を切った。

 非常に興味深いことに、マケイン氏は「米印民主枢軸によってミャンマーとイランの民主化を促進すべきだ」と訴えた。地理的な観点からすれば、インドは東アジアと中東の間にある。戦略的提携関係がアフガニスタン・パキスタン問題を超えても不思議はない。インドはアメリカ、オーストラリア、その他アジア太平洋地域の民主主義諸国とも海軍での協調関係を深めている。ユーラシア大陸の東西を結ぶインドは、アメリカの大西洋戦略と太平洋戦略に整合性を持たせる重要な位置にある。問題は、オバマ政権が世界の民主化におけるアメリカの指導的役割を強く主張することにやや消極的なことである。よって、イランとミャンマーの民主化を目指す米印提携は、将来への青写真にとどまりそうである。

 中国の平和的台頭に関して、マケイン氏の発言にはインドを対中防壁とする考えを示唆すると思われるところはあったが、中国批判には慎重であった。マケイン氏は財界の権益にも考慮を払ったのであろう。しかし、米印の戦略的提携関係が中国を「責任ある大国」にするために一定の役割を果たすだろうとも述べた。他方で、カーネギー国際平和財団のジョージ・パーコビッチ副所長は11月4日の内部インタビューで、米印関係は持続的に発展するべきで、ブッシュ政権による米印原子力協定のような「アンフェタミン」に頼るべきではないと述べている。特に、リベラル派は、NPT非加盟国との原子力協定は、核不拡散というアメリカの国益に矛盾するとして反発している。また、インド国内での原子力施設の査察がアメリカ製のものに限られ、他の原子力施設には及ばないことに、リベラル派は懸念を抱いている。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム