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2010-11-25 15:28

(連載)米政治に多大な影響力をもつ2つの保守勢力(2)

島 M. ゆうこ  エッセイスト
 クルーグマンは、「ムーブメント・コンサーバティブの最初の大統領は、レオナルド・レーガンであり、次ぎがジョージ・W・ブッシュであった」と言う。レーガノミックスとして知られるサプライサイド経済学を強固に支持したレーガン政権は、大規模な財政赤字と経常収支赤字の双子の赤字を出した事は有名である。また、公正と調和をスローガンにしながら、真実を歪曲して報道する傾向があるニュース番組として知られるフォックス・ニュース・チャンネルはニュース・コープから献金を受け、熱心に共和党を支持している。8月18日の『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、「フォックス・ニュースのオーナーで、世界で三番目に大きいメディア多国籍企業であるニュース・コープが7月、今期最大の企業献金となる100万ドルを共和党知事協会に献金した」と報じた。

 クルーグマンは、「ムーブメント・コンサーバティブには、明らかに保守派の多様なシンク・タンク・グループや企業のロビー活動グループが存在し、それらのロビー活動家と政治家の間には癒着がある」と述べている。共和党のトム・デレイは、1995年、ワシントンDCにあるKストリートのロビー活動地区で、ロビー活動企業の全てを共和党への献金に結びつけるキャンペーンを行ったことや、2002年に、企業献金を州議会の共和党候補に流入させ、選挙資金法違反で2005年に起訴された事件で知られている。

 クルーグマンはデレイの例について「民主党員をロビー活動組織から追い出し、忠実な共和党員にその仕事を与えることを計画した、Kストリート戦略と呼ばれる活動の目的の一部は、民主党に直接圧力をかける事により民主党を財政的に困窮させ、共和党が企業寄贈の獅子の分け前を得る事を確実にするためであった」と説明し、「ムーブメント・コンサーバティブの様々な組織は、単に選挙運動資金の献金問題ではなく、個人の経済的な展望性についても、共和党の政治家を優遇するための強力な動機になっている」と言明している。

 ソーシャル・コンサーバティブにもロビー活動を行う組織が多数存在する。基本的に社会のモラルを強調し、連邦政府の役割を最小限化させることを理想とし、伝統的な道徳を重要視し、避妊、同姓愛者、同姓愛者の結婚、銃規制に猛烈な反対をしている。また、宗教、特にキリスト教思想を背景に、学校で祈祷すること、教育に聖書を編入することを提唱している。主に福音主義またはカソリック教会の信者や宗教団体で推進され、避妊を殺人行為と見なすため、あらゆる手段を使って避妊を阻止するプロライフ(生命尊重)運動を支持する。運動の一環として、若い女性が内密に妊娠テストや相談を受けている施設が全国のいたるところに存在する。駆け込んだ若い女性は、避妊しないよう熱心に説得される。しかし、避妊の数を減らすための助成プログラムは十分開発されていない。辛らつなケースでは、避妊を行う病院又は施設が襲撃されたり、建物を破壊されたり、医師が銃殺されるなどの暴力行為が、これまで20年間にかなりの頻度で発生している。1973年、ロー対ウェイド事件の米国最高裁の判決後、避妊は合法であるが、このように過激なクリスチャン・テロリズムに国民はショックを受けている。(つづく)
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