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2010-12-17 07:42

首相の「動き」を、「ヤバイ」と見る仙石

杉浦 正章  政治評論家
 隙間風は俳句の冬の季語だが、どうやら首相官邸にも吹き込んでいるようだ。官房長官・仙谷由人の異常なまでの首相・菅直人に対する「よいしょ」が、それだ。記者会見で何と30項目にわたって「リーダーシップを発揮した」と持ち上げたのである。時間にして14分も“演説”したのだ。仙谷の異常な心理状態から垣間見えるものは、首相・菅直人との間の確執だ。

 事の発端は12月15日の記者会見で菅が指導力を発揮した事例を聞かれて、「明日までに思いだしておく」と約束。16日になって、諫早湾干拓事業での上告断念に始まって、法人税5%引き下げ、沖縄訪問に至るまで、すべて「総理のリーダーシップによって」「総理がリーダーシップを発揮した」と「リーダーシップ」を16回、「決断」「決意」を14回も使って讃え上げた。「思いだしておく」と言ったが、いつの間にか10人もいるようになった官房長官秘書官を総動員して、調べ上げたに違いない。もともと官房長官職は、首相をいかにプレーアップするかが仕事だ。古くは佐藤栄作の官房長官・橋本登美三郎が「首相指示」を連発して、「何でも指示長官」とやゆされた例がある。しかし、国会答弁でも首相に代わってしゃしゃり出て、野党の不興を買ってきた仙谷が、何故ここに来て突然変わったのだろうか。

 まぎれもなく菅との確執の裏返しだ。官邸をウオッチしていれば分かる。発端は、ここ数日の菅による突然の記者発表だ。13日には夜の10時に自らが公邸前で法人税率の5%引き下げを発表。15日朝には諫早湾裁判で「私が上告しないと判断」と表明。重要問題で自ら発表する動きに出たのだ。もともと諫早問題で仙谷は「上告断念は難しい」との判断であり、開門が持論の菅との間であつれきがあったと言われる。今日の首相沖縄訪問に関しても、消極論であったようだ。菅は支持率の急落に焦っており、仙石に任せてはいられないと判断したに違いない。仙谷への不信が根底になければ、首相が自ら発表することなどあり得ない。こうした首相の「動き」を、仙谷は「ヤバイ」、良い言葉を使えば「まずい」と感じたに違いない。

 15日の記者会見での質問を、渡りに船とばかりに取り上げて、秘書官に調べさせ、その書類を読み上げたのだ。普通、官房長官は記者からの質問にこのように懇切丁寧に回答することなどあり得ない。しかし、ことはやり過ぎると裏を読まれる。官邸記者は単なる話題としてとらえる前に、仙谷の過剰サービスぶりの背景に何があるかを分析しなければならないが、どの新聞も分析力不足だ。参院の問責決議可決が宙ぶらりんになっており、菅にとって見れば、仙谷更迭は垂涎の通常国会乗り切り策となる。菅が秋波を送り続ける公明党代表・山口那津男は16日、中国で記者団に「内閣改造を行って、仙谷官房長官らを交代させるべきだ」との立場を鮮明にしている。ご好評の駄洒落で言えば「物言えば唇寒し秋の風」(芭蕉)から仙谷は「物言えば首筋寒し隙間風」をひしひし感じている今日このごろでありましょう。
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