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2011-01-11 00:01

(連載)日豪印大三角形と日米印戦略対話(2)

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 シーレーン、宇宙空間、サイバースペースは、いずれも中国からの脅威にさらされている。中国は、海軍力を増強させ、南シナ海や東シナ海に進出し、沿岸各国の脅威となっている。尖閣沖衝突事件は記憶に新しいところである。さらに、中国は、インドを取り囲むように、バングラデシュ、ミャンマー、スリランカ、パキスタンなどにおいて、シーレーンを守ると称して、中国の投資により港湾施設を続々と建設している。

 これが所謂「真珠の首飾り」戦略であり、インドにとって脅威であるのはもちろんのこと、日豪印大三角形の頂点の一つであるインドが脅かされるということは、ひいては我が国にとっても不利益になるということだ。航行の自由が重要な国益である米国にとっても、是認しがたい事態である。日米印戦略対話は、こうした中国の海洋進出を強く牽制する意味がある。

 日米印戦略対話では、アフガン、パキスタン、北朝鮮といった地域情勢についても意見交換がなされる方針であるとされるが、是非、ミャンマーの地政学的重要性についても認識を新たにしていただきたいと思う。ミャンマーは「真珠の首飾り」戦略の一角をなし、中国がインド洋に進出するときには、必ず押さえておかなければならない要衝の国である。

 ミャンマーが中国傾斜を強めてしまった理由は、軍事政権による人権侵害を理由とする西側の対ミャンマー制裁である。対ミャンマー制裁は、ミャンマーを窮乏化させ、中国依存を強化してしまっただけであり、肝心の民主化には役に立っていない。その上、人権や民主主義といった価値は尊重すべきだが、ミャンマーに関する限り、戦略的価値と天秤にかけるほど軍事政権の独裁が苛烈極まりないというわけではない。これまで、西側の対ミャンマー政策はいささか硬直化し過ぎていた。日米印戦略対話においては、日印は協力して米国に対して、対ミャンマー制裁の緩和あるいは撤廃を求めるべきである。こういう時に、日米関係が良好であれば、米国に対して要望しやすいはずだが、現在はそうではないことが極めて遺憾である。(おわり)
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