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2011-01-12 07:57

小沢の政倫審先延ばしの“悪知恵”を分析する

杉浦 正章  政治評論家
 「通常国会召集後に出席して弁明する」と衆院政治倫理審査会に公式に伝達したことですら、民主党元代表・小沢一郎の場合信用出来ないのだから、始末に負えない。ずる賢いとしか言いようのない先延ばし戦術が濃厚にある、と見なければならないからだ。考えられ得る限りの“悪知恵”を駆使しての対応が始まったのだ。民主党執行部は、小沢を本当に国会招致するつもりなら、野党と結託して証人喚問を議決するよりないのではないか。いずれにしても、いよいよ今日1月12日から両院議員総会を皮切りに、首相・菅直人対小沢のデスマッチ最終戦が始まろうとしている。鳥瞰図で民主党内を見るならば、小沢は確かに追い詰められている。支持率回復を目指して、菅が政局であれ政策であれ手当たり次第に“活用”する作戦を展開し、その最大の目標が「小沢切り」となっていることが、効を奏しているからだ。

 従来の小沢の手法から言えば、野党とのよしみを通じて政権への揺さぶりで対抗するところだが、いま小沢に同調しようとする野党はない。公明党ですら拒絶反応だ。加えて、強制起訴が目前に迫っており、起訴された政治家は、民主党の場合離党か除名が相場となっている。まさに小沢は絶望的な「死中」に置かれつつあり、そこから「活」を見出せるかどうかだが、弁護士を総動員したとみられる悪知恵が出て来ている。最大のネックとなっている政倫審出席問題も、出席して従来通りの答弁を繰り返せば良いではないか、というのが一般的な見方だろうが、小沢の場合はさらに先を読む。出席しても、野党は「答弁に疑義がある」ことを理由に、偽証罪に問われる証人喚問を要求するに違いない、と思っているのだ。政倫審は、野党にとって証人喚問への突破口に過ぎないのだ。したがって、小沢としては、悪あがきに悪あがきを重ねて、隙を見つけて活路を切り開くしかないのだろう。

 その第一が、短期的には目前に迫った強制起訴の逆利用である。強制起訴されれば小沢疑惑は司法の場に委ねられ、小沢は刑事被告人となる。自らに不利な質問には当然黙秘権も行使できる。場合によっては起訴を理由に「国会で議論する必要はない」という論理構成だってできるのだ。しかし、かつて「国会は男を女にすること以外は、何でも出来る」と言っていたのは小沢自身だ。菅が決断しさえすれば、多数で証人喚問を実現できる。最も重要な“悪知恵”は、秘書の石川知裕の公判が近く始まることとも絡んでいる。検察が冒頭陳述で「小沢疑惑」にどう触れるかが重要な要素なのだ。それ以前に小沢が政倫審で発言した内容と食い違えば、ますます証人喚問論が勢いづくのだ。明らかに法律専門家の進言が背後にあるのだろう。

 だから、政倫審出席を先延ばしにして、最終的には強制起訴を理由に拒否する構えなのだろう。そのために「通常国会招集後に出席する」と事実上の虚言を弄しているとしか思えない。また、中期的には国会混乱が最高潮に達する「3月危機」の活用だ。「乱」の中に身を置いて、その「乱」を煽り立てる。政権が総辞職か「やぶれかぶれ解散」に追い込まれれば、どさくさに紛れて逃げ切る。強制起訴と「どさくさ作戦」が小沢の「死中の活」となろうとしているのだ。今日からの党内議論は軽佻(けいちょう)浮薄なテレビ・メデイアの格好の対象となるが、本筋を見失わないためにはこうした太筆書きの流れを念頭に置いてものを見ると良い。もっとも、この小沢戦略が窮鼠猫を噛むことになるか、それとも家中総掛かりのネズミ退治で猫いらずの毒に当たり、あえない最後となるかはまだ分からない。 
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