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2011-02-21 07:31

「解散・総辞職」3つの選択を軸に展開

杉浦 正章  政治評論家
 造反16人組は、小沢一郎の遠隔操縦が鮮明化するにつれて、マスコミ、世論から総スカン。朝日川柳では「議員として最初で最後の仕事かな」と揶揄(やゆ)された。一方で、菅内閣支持率下落は時事通信の調査で17.8%ととどまるところを知らない。民主党政権内は自分の欠点をそっちのけで他人の欠点を非難する「目くそ鼻くそを笑う」状況に突入した。八方塞がりに見える政局をあえて展望すれば、事実上死に体となった首相・菅直人が総辞職するか、解散に打って出るか、首相交代で新首相の手による解散かの3つの選択を軸に展開しそうな流れだ。筆者は、政治記者半世紀の直感で「16人組の主張は大義がなく、世論の支持も得られない」と書いたが、一歩遅れてマスコミも全く同様の見方となった。朝日新聞は、2月19日付の社説で「小沢氏系造反:異様な行動に理はない」と銘打って、「(1)国民生活を人質に取って「倒閣」に乗り出すのは政党人として到底許されない行動である、(2)マニフェストを菅首相が「捨てた」と断じるが、見当違いもはなはだしく、必要なら見直すのは、政権与党のむしろ責務だ、(3)会派だけから離れるという中途半端な行動ではなく、きっぱり離党すればいい」と真っ正面から切った。筆者の主張と全く同じである。読売の社説も「小沢系議員がマニフェストを守れなどと教条的に振りかざすのは、与党議員として無責任」と批判した。

 要するに、16人組は「小沢別働隊」なのであり、その本質は倒閣運動なのである。これを見間違ってはならない。どう見ても世論の支持を得られるものではあるまい。昔紅衛兵が「造反有理」を掲げたが、16人組は「造反無理」と言わざるを得まい。一方で、菅政権の支持率は共同通信が20%台を割ったのに引き続き、時事の調査も大きく割り込んだ。毎日も19%となり、朝日はぎりぎりの20%だ。過去3代の首相は、支持率20%割れで辞任している。支持率降下は、この「目くそ鼻くそ政争」がさらなる“減殺効果”をもたらし、低落傾向をたどるだろう。重要ポイントは、「小沢処分」が執行部側に全くプラスの作用をもたらさなかったことであろう。菅が居座れば、一ケタ台になる可能性があると指摘しておく。これが何を意味するかと言えば、菅の手による財政再建や消費税増税など超重要政治課題の解決は、不可能な段階に入りつつあることであろう。いくら壮大な政治課題を唱えても、世論や国民がその存在を否定するようでは、実現は無理なのだ。支持率70%の首相ですら困難な課題を、支持率10%台の首相がこなせると思う方がおかしい。菅は20日「大事業に毅然として取り組まなければならない」と必死の挽回を図っているが、手遅れ気味である。その余力はもうないと悟るべきであろう。

 今後の展開は、まず考えられるのが、菅による「やぶれかぶれ解散」である。その狙いは政権を捨ててもよい覚悟で、「憎っくき」小沢グループの一掃を図るところに置くだろう。民主党は、分裂しなければ小沢グループと菅支持勢力の“双頭選挙”となり、「政治とカネ」で小沢グループは惨敗するだろう。自公政権復活に数が足りなければ、小沢グループを切り捨てた「クリーン民主党」が自公との連立で政権に復活する可能性も否定できない。菅の主張する財政改革も実現可能だ。その一点に賭けた解散ということになる。菅が「消費税実行前に必ず選挙を行う」と述べているのは、小沢に対するけん制以外の何物でもない。菅に会った江田五月は20日、「総理大臣のいちばんの武器は解散であり、『解散しない』と言って、何もみずから手を縛る必要はない」と、これまた小沢をけん制している。しかし支持率が低迷する首相の手による解散は党内の「菅降ろし」を助長する可能性が高い。

 次にある可能性は、菅が総辞職することを前提に、来年度予算関連法案の成立を図る妥協に持ち込むことであろう。しかし自民党は「経済効果のない予算を根本的に手直ししないまま、首相が辞めるから全部のんでくれというのは、理屈が合わない」(幹事長・石原伸晃)と全面否定。自民党は「水に落ちた犬は叩け」戦略と見た。どうしても解散に追い込みたいのだ。しかし公明党は違うように見受けられる。基本的に統一地方選挙とのダブルはやむを得ないとしているが、首相辞任となれば、統一地方選挙も有利に戦えるし、創価学会組織もダブル選挙の混乱を回避できる。代表代行・仙谷由人が15日に公明党の漆原良夫国対委員長とひそかに会談して、菅の辞任と引き替えに予算関連法案での協力を求めたと言われる。この動きは今後の政局を見る上で重要ポイントだろう。最後のパターンが、菅は退陣、民主党が新首相に外相・前原誠司あたりを選出して、前原の手で解散するやり方だ。野党と話し合いが必要になり、事実上の話し合い解散となる。支持率どん底の菅の手による解散より、前原で選挙をやれば、負けても大惨敗はないだろうという読みが背景にある。その場合日程から言って統一地方選挙とのダブルは難しく、5、6月解散となる可能性が大きい。この3つの選択を軸に政局は展開することになる公算が大きい。
 
 
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