国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-03-17 07:27

うろたえるな日本人!

杉浦 正章  政治評論家
 「我々はいかなる犠牲をはらおうとも戦い続ける。そこが海だろうと、陸だろうと、原野だろうと、市街だろうと。絶対に、絶対に屈伏などしない」と、第二次大戦のイギリスの名宰相ウィストン・チャーチルは国民を鼓舞、激励した。英国民は奮い立った。バスケットの神様、マイケル・ジョーダンは「運命よ、そこをどけ、俺が通る」と言い切った。運命などに翻弄されるつもりはない、と意思表示して、自らを奮い立たせたのだ。後手、後手に回る対応策の中で、首相・菅直人からリーダーとしての言葉が発せられない。いまは不安にうちひしがれた国民を奮い立たせるときではないのか。天皇陛下が異例のメッセージを読み上げられ、「国民一人びとりが、被災した各地域の上に、これからも長く心を寄せ、被災者とともに、それぞれの地域の復興の道のりを見守り続けていくことを心より願っています」と訴えたのが救いである。

 連合艦隊司令長官・山本五十六は「やってみせ、やらせてみせて、誉めてやらねば、人は動かじ」と述べた。菅は持ち前のかんしゃく玉を破裂させているばかりである。東電関係者を呼んで、「情報が来ない」と怒鳴りつけても、物事は動かない。少なくとも東電は原子炉の破局を必死で食い止めようとしている。首相が呼びつければ、それだけ停滞することが分からないとは、首相たるもの、なすすべを知ってほしいものだ。未曾有の大震災に暴動も、略奪も起こらない日本人の倫理観に、世界的な賞賛の声が上がっている。天皇陛下も「海外においては、この深い悲しみの中で日本人が、取り乱すことなく助け合い、秩序ある対応を示していることに触れた論調も多いと聞いています」と述べられた。しかし、中には便乗値上げの悪徳業者や風評に乗ってトイレットペーパーの買い占めに走る主婦がいる。あの盛岡の被災地で卵6個を400円、カップラーメンを300円で被災者に売りつけるコンビニがあると聞く。泥まみれで、なけなしの千円札を持って買いに来た客にである。恥を知れといいたい。
 
 首都圏でも、筆者はスーパーで、トイレットペーパーやティッシュに群がり、奪い合う浅ましい光景を目の当たりにした。トイレの紙など新聞紙でも、何でも、代用になる。結局はデマに終わった石油ショックの教訓を忘れたのか。「うろたえるな日本人」と言いたい。ガソリンや、灯油、米の買いだめも、一週間我慢すれば済む話だ。石油も、米も、だぶついている。構造的な不足ではない。青森県知事の三村申吾は、政府に「油なくして、被災地の救援、再建はない。油の一滴一滴が命を守る」と窮状を訴えている。極寒で雪が降る被災地で塗炭の苦しみの中にいる人々に思いをはせれば、自ずと自制の精神がわいてくるはずだ。「金を残して死ぬ者は下だ。仕事を残して死ぬ者は中だ。人を残して死ぬ者は上だ。よく覚えておけ」は、後藤新平の遺訓である。後藤は関東大震災後に内務大臣兼帝都復興院総裁として東京の復興を成し遂げた。

 原発も危機的状況にあるが、ここは落ち着くべきだ。ソ連も苦闘の末チェルノブイリを押さえ込んだ。米国もスリーマイル島原発事故に敢然と対処した。ソ連と、米国に出来て、日本に出来ないはずがないではないか。この世の終わりなどは来ない。「為せば成る、為さねば成らぬ、何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」は上杉鷹山の言葉だ。リズムペインティング・アーティストのユキンコアキラは「目の前のカベはトビラかもしれない」、マイケル・ジョーダンは「今日がダメだったってことさ。今日は明日じゃない」。灰燼の中から不死鳥のように戦後の復興を成し遂げた日本人である。ここはふんどしを締め直して、うろたえず、沈着に、他人をおもんばかり、ゼロからの出発をしようではないか。チャーチルのように「絶対に、絶対に屈伏などしない」のだ。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム