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2011-04-28 07:38

「ポスト菅」は一体誰だろうか?

杉浦 正章  政治評論家
 「それなら後継は誰にするんだ、と言うと返事がない」と民主党最高顧問の渡部恒三が嘆いている。「だから菅しかない」と言うのだが、早稲田大学雄弁会出身とは思えぬ論理構成だ。筆者に言わせれば、菅が辞めないから、後継が見つからないのだ。その証拠には、歴代首相は誰が辞めても後継は決まっている。問題は、未曾有の大震災が自然災害と原発事故に対する戦争であり、いわば“戦時下”の非常事態に対応できるのは誰か、ということだ。乱世と言えば、あの人の名がすぐ浮かぶ。元代表・小沢一郎だ。金丸信が「平時の羽田孜、乱世の小沢一郎、大乱世の梶山静六」と述べたとおりだ。筆者が見たところ、こういうときには小沢が首相として最適だ。行動力、判断力、物事を見据える力は、小沢が卓越している。しかし、惜しいことに、可能性はない。いくら適格でも、刑事被告人を首相にしてはなるまい。「絶対受け取っていない」としてきた水谷建設からの1億円の献金を、4月27日の公判で、元社長自ら「秘書に渡した」と証言しているではないか。

 しかし「復興院総裁」なら話は別だ。後藤新平のように、首相になるという野望を棄てて、復興に専念するのだ。それも代議士を辞めることが条件だ。身を捨ててかかれば、信頼感も生まれる。政治家として後世に名を残すには、これしかあるまい。自民党元幹事長・中川秀直が27日「谷垣禎一総裁が首相、仙谷由人官房副長官が副総理で、期間限定1年間の内閣なら、自民、公明両党はまとまる」と述べている。菅が辞めれば、成立しうる大連立の枠組みとしては、考えられる案ではある。しかし、菅よりはましだが、谷垣は紳士的すぎて、平時の首相向きだ。地位は人を作るから分からないが、乱世向きとは思えない。それに仙谷が副総理では、いいように引っかき回されて、すぐに政権ががたつくだろう。それでは、その仙谷はどうかというと、民主党では小沢に次ぐ乱世型だ。面白いことは面白いが、官房長官時代の国会答弁を見ると、ピントの外れが大きい。首相としては危ういタイプとなる。

 また、仙谷では民主党が割れる。では、幹事長・岡田克也はどうか。統一地方選挙大敗で本人が幹事長就任を一時固辞したわけが分かった。「政治家」とはほど遠いのである。選挙に負けるのは時の運だが、不戦敗ばかりを繰り返してはいけない。「不戦敗は政治の放棄である」ことが分かっていない。言うことが杓子定規で、「心がない」のは、菅並みだ。渡部が、「政治家には向き、不向きがある。閣僚としては立派だが、幹事長には向かない」と述べているが、幹事長に向かないのなら、首相にはなおさら向かない。幹事長に失敗しては、乱世でも、平時でも、首相になれるわけがない。前外相・前原誠司は、外国人献金で潔く辞任したことで、候補として残った。最近では口を極めて批判してきた小沢の息がかかった会合に、自分のグループの議員を出席させており、やる気は十分あるとみた。民主党では、米国との関係が一番いい政治家だが、八ッ場ダム建設中止発言に見られるように、“コンクリート”アレルギーが気になる。今度の首相は「土木首相」であるからだ。

 玄人筋がもっともらしく農水相・鹿野道彦の名を挙げているが、父親の鹿野彦吉は政治家として有名だったが、二世で学習院出身は、麻生太郎ではないが、もうこりた。安易に毒にも薬にもならぬ者を引っ張り出して、首相に据えては、この乱世を切り抜けられまい。最近官房長官・枝野幸男が売り出し中だ。首相候補として世論調査で上位に上がってきたことについて、本人は「個別の一個一個の世論調査の具体的な数字が、世論そのものとイコールであるかというと、そうではないと思っている」と述べているが、偉い。物事が分かっている。記者会見を頻繁に報ぜられるから、調査の数字が上がっただけで、民意は枝野の写真を日本の首相と誤報したイタリア紙レベルとみたほうがよい。こまっちゃくれているから、10年早い。
 
 自民党政調会長・石破茂は、時事通信の世論調査でも首相候補として常に上位に進出してきた。昨年12月の調査で1位、2月の調査で3位だ。顔はごついが、ネットで若者に人気がある。平時か乱世かと言えば、乱世型だ。筋の通ることを言うというのは、首相の第1条件と言ってもよいが、石破は筋が通っている。小沢と自民党が接近していることについて、「天皇陛下も自らの思いのままという、天をも恐れぬ発想をして恬(てん)として恥じないような人物と、どうして組めるのか」と、真っ向から反対している。頭の回転、切れもいい。問題は大連立を否定して、首相になれるかということだ。小沢抜き大連立なら可能性はなくはない。ああでもない、こうでもない、と書いてきたが、なぜこういう記事になるかというと、政界が「ああでもない、こうでもない」と言っているからだ。現段階での首相候補特定は、週刊誌や三流評論家に任せるしかない。しかし渡部の言うように「後継が定まらないから、菅」は発想が逆だ。「菅が辞めれば、後継は定まる」のだ。 

  
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