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2011-07-18 00:06

「中華民族」主義の膨張論理にまったく無警戒な韓国人の危うさ

酒井 信彦  日本ナショナリズム研究所長・元東京大学教授
 最近、中国政府が朝鮮の民謡アリランを、国家無形文化財に指定したことで、韓国側が反発しているという。この件については、他紙にも取り上げられているが、6月24日付けの東京新聞では、ソウルの辻渕智之記者がかなり詳しく報じている。それによると、中国が6月10日に中国吉林省の延辺朝鮮族自治州に伝わる、朝鮮人の民謡アリランを、少数民族の文化を尊重するとして、国家の無形文化財に指定した。これに対して、鄭柄国という韓国の文化体育観光相である人物が、「中国がわれわれの歌を文化財登録するとはとんでもない」と批判し、「国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産への来年登録を目指す対抗策を表明した」という。また韓民族アリラン連合会という団体は「民族性を無視した中国膨張主義の横暴とみて、『アリラン継承への脅威。中国による東北工程の一環だ』と問題視する姿勢を表明した」という。この東北工程とは、中国による歴史研究であり、高句麗や渤海を中国の地方政権であったとするもので、両国とも朝鮮であるとする韓国とは、歴史理解において全く対立するものであった。

 ただし、私に言わせれば、韓国人がアリラン問題や東北工程問題で騒ぎ出すのは、全くおかしな話であって、それはシナ人が所有する犯罪的な民族観・歴史観を、韓国人が全然理解していないからである。シナ人には100年も前から、中華民族主義と言うシナ人特有の民族観があって、その最大の特徴は民族概念が二重構造になっていることである。中国で「~族」と呼んでいる、全国で56ある民族は、あくまでも下位の民族概念であって、それを全て包含する上位の民族概念として「中華民族」がある。つまり公式的には、漢族・シナ人だけでなく、蔵族・チベット人などいわゆる「少数民族」も、すべて「中華民族」すなわち中国人であることになる。

 したがって、中国を構成する56民族の一つである朝鮮族・朝鮮人も、当然「中華民族」に含まれる。2000年の人口調査によると、「朝鮮族」の人口は192万人ほどであって、最も多く住んでいるのが、旧満州の地である吉林省の延辺朝鮮族自治州なわけである。つまり、中国政府がアリランを国家無形文化財に指定したのは、あくまでも国内問題として当然のことをやったのに過ぎない。そんなことよりも、根本的に問題なのは、56の民族が一つの「中華民族」だとする、「中華民族」主義の犯罪性そのものである。完全に中国の属国である北朝鮮の人々はともかくとして、韓国人が「中華民族」主義イデオロギーの危険性に無知であるのは、驚くべき鈍感であると言うしかない。それは、この「中華民族」主義は、シナ人による今後の更なる侵略を正当化する凶器になりえるからである。

 現在のところ、中国国内の朝鮮人だけが「中華民族」になっているが、将来的には朝鮮半島の朝鮮人も「中華民族」にさせられる可能性が、極めて高いのである。そうなれば朝鮮半島も中華民族の居住地であるから、当然「中国」の一部とされてしまうのである。チベットや東トルキスタンは、この「中華民族」の論理によって、シナ人に侵略・併合された。
ところで、6月25日付けの日本経済新聞ソウル支局山口真典記者の報告によれば、韓国の中高校生2500人を対象にしたアンケートによると、最も警戒しなければならない主敵を、日本とするものが第1位で34パーセント、第2位が北朝鮮で17パーセント、ついでアメリカが15パーセント、そして中国は10パーセントに過ぎなかった。これも韓国人が、自分たちが侵略される可能性のある最大の敵が、シナ人であることを全く分かっていない、明らかな証拠である。
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