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2011-08-03 09:45

(連載)世界は、日本のクリーン・エネルギー政策に注目している(2)

島 M. ゆうこ  エッセイスト
 フタンフォード大学の研究チームは「公害から年間250万から300万人の生命を救い、温暖化を防ぎ、現在利用されている技術と費用で世界の電力を100%再生可能エネルギーに変換することが可能である」との研究結果を今年1月下旬に発表している。この研究チームは「今後20年から40年までに、世界の全エネルギーの90%は太陽熱と風力による電力で賄い、地熱発電と水力発電にそれぞれ4%、残りの2%は潮汐および波力エネルギーから、合計100%のクリーン・エネルギーを利用することが可能である」と報告している。「ガスや石炭に依存しなくても、自動車、船舶、列車などは電力と水力発電を利用、飛行機は液体水素で運航可能であり、家庭は電気ヒーターにより、水は太陽熱で再加熱できる」と述べている。問題は「社会的および政治的な意志があるかどうかだけである」と自信満々の発表を行っている。

 この研究チームの中心人物の一人であるマーク・ジェイコブソンは「最も大きな障害とされている天候の変動性については克服できる」としている。「太陽熱、風力、ダムを利用した水力発電など、複数の再生可能エネルギーを同時に組み合わせたシステムが電力供給のギャップを解消する」という。ダムには、防堤ダム、重力ダム、アーチ・ダム、扶壁ダム,潮汐ダムなど地形に応じて様々な形態があるようだ。「昼間がピークとなる太陽熱、夜間がピークとなる風力から発電する余剰供給は保存し、水力発電を組み合わせることで、ギャップは簡単に埋めることができる」とジェイコブソンは述べている。また、この自然電力を十分に供給する方法に、遠距離伝送システムがある。ある地域で天候の状況が悪く、太陽熱や風力が不足する日でも、数百キロ離れた別の地域では、安定した風力が得られたり、あるいは太陽が燦燦と輝いている場合もある。スーパーグリッドと呼ばれる遠距離大量電力伝送システムの開発と良好な管理システムにより天候の問題は解消できるという。別の方法として、「ピーク時の需要に合わせるため、より規模の大きい再性可能エネルギーのインフラを構築し、企業や交通部門でエネルギー変換効力率の高い水素を生産するため、時間外の余剰電力を使用することである」と述べている。

 タービン、太陽パネル、その他の装置を建設する材料についても、楽観的な見解を示している。「潜在的に供給が困難とされているソーラー・エネルギーに必要なプラチナ、希土類元素は、十分な量が利用でき、そのような資源のリサイクルで更に効率性を上げることができる」と話している。また、研究チームは、彼らの計画に基づいて、ソーラーパネルの製造工場およびソーラーパネル、さらに地熱発電、水力発電、潮汐および波力エネルギーの導入にどれくらいの数量が必要かを計算し、風力エネルギーの材料である「コンクリートや鋼鉄なども不足していない」と述べている。「再生可能な天然エネルギー資源を利用して全世界をクリーン・エネルギーに変換するための技術的・経済的障害は皆無である」と結論づけている。燃焼プロセスからクリーン・エネルギー電力への変換は「はるかに効率的であるため、世界のエネルギー需要を30%削減できる大きなメリットがある」と述べている。

 また、世界のエネルギーを100%クリーン・エネルギーに変換するために必要な土地は、「世界の土地の0.4%だけである」とし、「装置と装置間のスペースに必要な土地として、世界の土地の0.6%が別途必要である」と述べている。「風力発電には大規模な土地を必要とする」との懸念に対しても、「牧草地や農業用土地にも利用できる」とし、「世界の風力発電の50%に必要な土地はマンハッタン全域のサイズに満たない程度の土地で充分である」と述べている。全世界の電力をクリーン・エネルギーに変換することは、「アポロの月面到着と高速道路の構築に相当する努力が要求される」とし、不可能ではないことを強調している。日本でも様々な角度から、研究がなされているはずであるが、このような研究結果を、日本の政治家が自国の立場からどのように解釈し、研究し、応用するのか、今後の日本のクリーン・エネルギー政策が注目される。(おわり)
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