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2011-08-05 07:23

経産首脳人事で政権の“学級崩壊”極まる

杉浦 正章  政治評論家
 一省庁の人事で断末魔の政権が浮揚・延命できるはずがないことが分からない首相・菅直人。自分の部下を切ることを、代表選挙への切り札に使おうとした経産相・海江田万里。この国政の大局を忘れた「政権亡者」2人の戦いが、経産相事務次官らの人事をめぐるバトルの核心だ。とりわけ、政治主導どころか、官僚をリードできず、逆に“敵”に回してしまった首相の政権担当能力欠如は、図らずも白日の下に露呈されてしまったことになる。ここまでくると民主党政権の“学級崩壊”は極まったというしかない。「人心一新は1か月前から考えていた」という海江田は、8月4日付の朝日新聞のスクープ報道「経産省3首脳更迭へ、首相意向」という記事を見て、飛び上がって、激怒した。明らかに官邸側からのリークと分かる記事であり、それも首相自身か、側近からのリークであろう。海江田は朝駆けの記者らに怒りの感情を隠さなかった。

 「菅さんは自分が人事を決めるような情報操作をしている」と、菅によるリークを怒っただけではおさまらず、「余りにひどい。腹に据えかねる。姑息であり卑怯だ」と憤まんをぶちまけた。その上で急きょ会見して、発表してしまうことを思いついたのだ。なぜこれほどまでに怒ったかというと、経産省人事は、既に海江田が菅の玄海原発再稼働への横やりで辞任の意向を漏らした7月上旬の時点で、動き始めていたのだ。事務次官・松永和夫以下3首脳が「大臣が辞めるのなら、我々も辞めます」と辞任を伝えていたからだ。これを受けて海江田は、後任人事構想を練った。もちろん基本は「更迭」でなく、「通常人事」の方向だ。事務次官らは、もういつ辞めてもいい任期を勤めており、海江田はこの人事を成し遂げたことを花道に、自らも辞任して、「悪名高き経産省の人事を遂行」と喝采を浴びつつ、代表選へという筋書きを描いていたのだ。

 一方、菅はこの「宿敵」経産省の動きを察知して、7月下旬から首相主導による「経産省切り」へと動いた。改革派の抜擢人事で同省を牛耳る、というのが基本だった。経産省出身の東大教授・奥村裕一や、発送電分離論の元事務次官・村田成二、その他の民間人らの事務次官起用などを検討していたといわれる。今度は、この官邸の動きを逆探知した経産省側に、にわかに緊張感が走った。これを受けて海江田が、機先を制するために8月2日、菅を訪れて人事の大枠を伝えて、一応菅の了承を取り付けて、押さえ込みにかかったのだ。しかし、海江田は判断を間違った。過去数度にわたって菅に煮え湯を飲まされていることを、愚かにも忘れていたのだ。経産相抜きの1000万戸に太陽パネル構想発表を皮切りに、浜岡原発停止の横取り発表、玄海原発再稼働阻止など、全て海江田無視で行われた。海江田の報告を受けた菅は、「しめた」とばかりに対策を練ったが、今回ばかりは自ら発表するわけにはいかない。そこで朝日にリークする手法を選んだのだ。

 朝日は喜んでトップで報じたが、見出しに「首相意向」とやっては、ネタ元がばれる。そして海江田の激怒に直結したわけだ。ただでさえ「辞める時機を逸した」と嘲笑の対象になっていた海江田にしてみれば、「人事があるから辞めるに辞められなかったのだ」と世間を納得させるチャンスであった。同情を買おうとしていたのであろうが、まさに名うてのすり「ちゃっきり金太」に大事なネタをすられた形だ。海江田は、新次官らに辞令を12日に交付したうえで、辞任することになろうが、号泣したり、すられたりで、首相候補としての資質を疑われる事態となった。同じ鳩山グループの国土交通相・大畠章宏とともに辞任するのではないかという見方が強まっているが、そうなれば、まあそれなりのインパクトとなろう。まさに末期症状の醜悪なるドタバタ劇だが、みんなの党代表・渡辺喜美が「官邸と海江田氏でどっちが更迭したか、手柄争いをやっている」と述べているとおりの愚劣さだ。菅にはそれくらいしか政権浮揚策が見当たらないのだ。大震災で喘ぐ国民は全く不在だ。 
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