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2011-08-10 07:46

逃げ場なし、菅事実上「月内退陣」を表明

杉浦 正章  政治評論家
 まるで歌舞伎で問答や口論の末に、「さあ、さあさあさあさあ」と双方が調子を高めていく極めつけ場面だ。悪代官が追い詰められて、「うぐっ!辞めたぁ~~~」と苦悶の声を振り絞る。観客は割れんばかりの拍手だ。そういう状況になるかというと、なるのだ。ここまで追い詰められれば、首相・菅直人にもはや逃げ場はない。与野党合意で外堀も内堀も埋まった。ようやく退陣にめどが付き、月内にもポスト菅が決まる方向と見る。

 野党からはこけにされ、菅からは「退陣せず」をほのめかされ続け、板挟みのストレスが募る一方であったのだろう。幹事長・岡田克也が「辞めると思うという認識に変わりはないか」と記者から問われ、「思うでなくて、お辞めになります」と言い捨てた。むかつきが頂点に来て吐き出させた言葉だ。「辞めなきゃあ、ただではおかねえ」という感情が込められているし、それなりの確証も、菅から得てのことだろう。一方菅は、記者団から「3つの条件が整ったら退陣するという意向に変わりはないか」と聞かれたのに対し、「これまで自分が言ったことについては、ちゃんと責任を持ちます」と答えた。この時点におけるこの返答は、誰が考えても、赤字国債発行法案と再生エネルギー特措法案が成立すれば、月内に退陣する意向を表明したことになる。

 しかし、信用度ゼロの人の場合は、念には念を押さなければならない。2法案の成立が確定的となったのに辞めないことがあり得るかどうかだ。最後の最後まで卑しげにポストに執着してきた菅でも、それだけは無理だ。「辞めなければ辞めさせられるから、辞めざるを得ない」という単純な方程式に達するからだ。なぜなら、国会が、与野党一致で時の首相を辞めさせるための一点に絞って、法案の成立を図る。こんなことが一体過去にあったであろうか。会期の延長も煎じ詰めれば、菅を辞めさせるためだ。憲政史上はじめて首相を辞めさせるために通常国会を延長して、法案を成立させるという事態なのだ。8月9日の赤字公債発行法案成立の与野党合意は、ただひたすら「菅を辞めさせたい」という思いが実態として存在するから出来得たことなのだ。

 これを菅が裏切ったらどうなるかだが、辞めなければ国会の怒りが爆発する。怒りと嫌悪と憎悪が「不信任案の再提出」の一点に凝縮して噴出する形となるのだ。床にガソリンがまかれて、マッチ一本で燃え上がる状態になる。小沢一郎が、民主党から不信任案を再提出する構えなのは、辞めなければ政界全体の堪忍袋の緒が切れることを予測してのことだ。そしてその不信任案は確実に成立する。成立した場合解散できるかというと、有能な刺客を立てれば、菅自身が落選しかねない選挙分析があるような事態では、とてもできまい。破れかぶれの発狂解散までは、いくら菅でもできまい。菅にとっての選択肢は、野垂れ死に型の総辞職しかなくなるのだ。いくら権力欲の妄念に取り憑かれた首相でも、そこは気付くだろう。解散権は新首相の手に委ねられる方向となった。

 もはや菅が解散するなどというのは、みのもんたとそのコメンテーター程度の判断レベルに限られる。こうして菅は、完全に退路を断たれた形だ。残る退陣2条件が成立すれば、退陣せざるを得ない情勢に立ち至ったと言える。自民党もこれ以上予算関連法案を人質にとってごね続ければ、世論の批判が自分に跳ね返るという危機感を抱くに至ったのだ。ここまで追い込んだ以上、野党も一刻も早く菅を退陣させて、邪悪なる存在を政権から取り除くべきだ。2法案の早期成立に協力すべき時だ。民主党は「8月28日にも代表選挙をしたい」としている。それに間に合わせるべきだ。月末の首班指名を可能とすべきだろう。
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