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2011-10-24 10:46

カダフィ氏の死亡とプーチンの再登場

大沼 瑞穂  東京財団研究員・政策プロデューサー
 一人の独裁者がまた民衆の手によって葬られました。しかし、リビアの新国家づくりの将来は決して明るいものではありません。エジプトでは、ムバラク政権が倒された後も、混沌状態は続き、軍部と民衆の対立は深まっています。リビアでもすでに、国民評議会内の不和が外に聞こえ、漏れている状態です。ヨーロッパは、ギリシャ問題に揺れ、リビアでの利権争い以外、すなわち、リビアの民主化や経済の立て直しなどに、積極的に介入する気も、また余力もないでしょう。国民評議会内で誰が権力を持ち、誰、もしくはどのグループと仲良くしていれば「石油」を安く手に入れることができるか。そうした安易な思惑でしか、リビアの問題をとらえていないように感じます。

 アフガニスタン、イラク、エジプト…独裁者は消えましたが、その後の国づくりはなかなか順調には進まず、いまだ治安は回復されず、国民の多くが不安を抱えながら生活をしています。部族間対立、宗教と政治の距離、そして石油という利権。これらを統合して、民主的な法治の下で解決していく。それは並大抵なことではありません。金融危機後、民主主義国家での政策決定プロセスの限界が露呈されました。

 ギリシャ問題でも、ヨーロッパは民主主義と政策の間で悩ましい状況に追い込まれています。それでもなお、一人の指導者が何十年も権力の座につき、批判を受けないことの弊害の方が大きいのは明らかです。しかし、こうした混沌状態が続けば、民衆はおのずと「強いリーダーシップ」を求めます。ロシアではプーチン氏が再び表舞台に立ち、旧ソ連圏での経済協力を通じて、「ユーラシア連合」を作り、EUや米国に対抗しようとしています。そして、強きリーダーの必要性を訴えています。もちろん、指導者にリーダーシップは必要です。

 しかし、それは、言論の自由や民主主義という土台に乗った上で、常に選ばれ続けるという前提がなければなりません。言論の自由や民主化が制限された状況下での強いリーダーシップは、独善的にならざるを得ないからです。イラク、エジプト、リビア、そしてロシア。新しい国づくりにおいて強いリーダーシップはどうあるべきか。EUも、米国も、そして日本も、民主主義の限界を認めてもなお、民主主義下での強いリーダーシップのあり方を内外に示していく必要があります。
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