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2011-10-28 10:05

(連載)「プーチン復帰で平和条約問題前進」という幻想(2)

袴田 茂樹  青山学院大学教授
 2000年9月、森首相とプーチン大統領の合意で、平和条約問題の解決に寄与するためとして「日露フォーラム」が創設された。驚くべきことに、翌年のその第1回会議に日露問題専門家として政府がロシアに送り込んだのは、2島論者として長年政府、外務省と対立していた和田春樹東大教授(当時)であった。さらに、プーチン来日の直前に、野中自民党幹事長は「北方領土問題と平和条約は切り離してもよい」という意味の発言をし、鈴木宗男議員がこれを支持し、さらに政府の対露政策の責任者である東郷和彦欧亜局長も、この野中発言を「重大に受け止める」と述べた。東郷氏は「これは幹事長個人の考えで、政府の立場とまったく異なる」と発言しなければならない立場にいたはずだ。ロシア側はこれらの日本側発言に強い関心を示した。「4島返還」は国内向けのタテマエで、本音では2島返還論に限りなく近づいている、とロシア側が理解したのは当然である。

 プーチンはそれゆえに、これらの発言が日本の真意ではないと知ったとき、日本側に裏切られたと感じたのである。2005年以後、プーチンは2島返還論も否定するようになった。そして近年ロシアは精力的に北方領土のロシア化を進め、今は日露間に「領土問題は存在しない」という、かつてのソ連時代の立場に近づいている。これが「大戦の結果だ」というプーチン発言の今日の姿である。

 領土問題は国家主権の問題であり、毅然として主張し続けること自体に意味がある。もしこの問題が解決に向けて進展するとしたら、そのための条件は次の3点だ。(1)日露両国に安定した強力な政権が存在する。(2)両国首脳間に、信頼関係が存在する。(3)領土問題の解決が日本だけでなくロシアにとってもメリットだ、とロシア側が認識する。

 今は日本側にも、ロシア側にも、これらの諸条件は存在しない。来年プーチンが大統領に復帰するが、形の上ではプーチン・メドベージェフのタンデムは今後も続くことになる。これらの諸条件を欠いたままで、新たなプーチン大統領時代に平和条約交渉を進展させようと焦って、あれこれロシア側に働き掛けるのは、かえってロシアを強気にさせるだけである。主権問題をきちんと主張すること自体に重大な意味がある、ということをしっかり認識し、対露外交は、日本の力量や国際情勢が変わるまで、焦らずじっくりと腰を落ち着けて行うべきだ。(おわり)
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