国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-11-07 09:57

ギリシャのNO!-古代ギリシャは未だに世界の中心!?

川上 高司  拓殖大学教授
 この数日間で2つの「NO!」が叫ばれた。一つは、アメリカの「NO!」だが、いま一つは、ギリシャという古代帝国が叫んだ「NO!」で、こちらは世界を動揺させ揺さぶった。これこそ「世界の中心でNO!と叫ぶ」そのものであった。
 
 「“今そこにある危機”の原因たるギリシャをいかに救うか」という点で、犬猿の仲の仏独は妥協し、救済プランをまとめ、北京へ助けを請うた。救済プランは、銀行にギリシャの借金の半分をチャラ(白紙)にしてもらい、1,780億ドルの支援を行うというもの。このプランでギリシャの破綻は当面先送りされ、次なる危機であるイタリアをどうするかに、メルケル首相とサルコジ大統領の関心は移っていた。

 世界が安堵したのもつかの間、ギリシャのパパンドレウ首相は、この救済プランの受け入れを国民投票にかけると発表し、救済に待ったをかけたのである。この救済プランは、ギリシャの緊縮財政を求めるものであったため、60%の国民が反対している。したがって国民投票にかければ、救済プランが「NO!」と拒否される可能性が高かった。拒否されれば、ヨーロッパは破綻へとまっしぐらである。その不安からヨーロッパ、ニューヨーク、東京の株式市場は軒並み下落し、世界同時株安の悪夢が再び蘇って、世界が震撼した。

 メルケル首相とサルコジ大統領の怒りは察して余りある。厳しい交渉を延々と重ねたにもかかわらず、直近に迫ったG20でギリシャ救済プランを報告できず、中国への支援も宙に浮いた。スウェーデン政府は「ギリシャの国民投票は理解に苦しむ」と苦言を呈し、フィンランド政府は「ユーロに残るか、離脱するか、を決めるべき」と突き放している。ドイツでは国民や議会はそもそもギリシャ救済には反対であるため、国民投票で救済プランが拒否されれば、支援を止められると歓迎している(救済に必死なのはメルケル首相だけである)。ギリシャは2008年のGDP規模が約35兆円(世界第26位)で、GDP38兆円の大阪府よりも小国、ドイツのGDPのほぼ10分の1でしかない。世界はギリシャというジェットコースターに乗っていて、そして当分降りることができない。古代帝国はいまだに世界の中心なのである。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム