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2011-12-08 10:43

(連載)「統一ロシア」敗北とチェチェンへの影響(1)

大富 亮  チェチェンニュース発行人
 12月4日に投開票されたロシア下院選(450議席)の結果が出た。プーチンの与党「統一ロシア」が70議席を減らし、過半数の維持がやっとになった。とてもいいことだ。これについては、西日本新聞の社説がよくまとまっている(http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/276749)。来年春には大統領選挙が待っている。ここで、メドベージェフからプーチンへの権力の移譲をするというのが、プーチン側の考えだが、ロシアの市民も、そこまでバカにされては腹が立つにちがいない。

 また、欧州安全保障協力機構(OSCE)が派遣した選挙監視団も、多くの選挙違反があったと報告している。これは、ロシアを含むOSCE加盟国が、協定のもとで行っている活動だが、毎回ロシアについては同じような報告が上げられている。日経新聞では「開票作業で深刻な不正、一部野党の政党登録を認めず選挙戦から排除するなど、政治的な競争は限定的で、選挙は公正さに欠けた」と指摘されている。そういえば、日本政府もOSCEの選挙監視に協力しているはずだ。どうして今回の結果に対して、外務大臣は談話を発表しないのだろうか。モスクワに人を派遣しても、何の見解も示さないなら、税金の無駄遣いだ。

 さて、チェチェンではどうかというと、チェチェンでの投票率は、当局発表で99.51%。うち「統一ロシア」への投票は99.48%にのぼった( http://en.rian.ru/russia/20111205/169362739.html)。そんなことがあるわけがない。1938年に、ナチスドイツがオーストリア併合のために行った「自由秘密国民投票」では、併合賛成票が97%にもなった。投票用紙に細工がされていたり、実にひどい投票だったのだが、カディロフのチェチェンは、同じレベルだ。カディロフはプーチンを父とも慕っているので、もちろん投票先は「統一ロシア」である。選挙違反はロシア全国で起こっているとはいえ、チェチェンはもっとも異常な地域といっていい。ちなみに、全国的には60%程度の投票率だ。

 ロシアの人権団体「メモリアル」などによれば、選挙当日、チェチェン共和国保健省の職員が、投票への参加を強要された。「もし投票しなければ、給与を差し止める」と脅されて。また、自宅までバスがやってきて、投票所に連れていかれたケースもある。投票所には、大勢の成人、学生などが滞留していたが、この人々は投票者であるふりをするために雇われていたという(http://www.eng.kavkaz-uzel.ru/articles/19224/)。(つづく)
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