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2011-12-11 11:31

(連載)野田流政治の限界(2)

尾形 宣夫  ジャーナリスト
 沖縄の怒りはもう手が付けられない状態、と言っていい。仲井真沖縄県知事が防衛相と防衛事務次官の釈明・陳謝を途中で切り上げて席を立つなどは、「犯す発言」がいかに沖縄を傷つけているかを表している。ただでさえ、鳩山元首相の「最低でも県外移設」で裏切られた政権不信が、その後の対応のまずさもあって膨らんだところに、「犯す発言」が追い討ちを掛けた。空路那覇に着いた防衛相を待っていたのは、「帰れ」、「辞めろ」という抗議の声の渦だったし、県庁前の広場でも同じだった。 防衛相は知事の前で腰を深く折り曲げて詫びたが、帰京すると「(問責決議案は)致命的ではない」とアセス評価書の年内提出やFX(時期主力戦闘機)決定に努力すると強調(12月6日の会見)する始末で、防衛相就任以来の幾つもの不始末を忘れたかのような強気ぶりだ。

 防衛相はなぜ、こうも強気に転じたのかは、党内事情抜きには語れない。野党の問責決議案の対象とされる防衛相も、国家公安委員長も、ともに党内では「小沢グループ」に属する。党内バランスを図った野田内閣から仮に両氏が去るようだと、政権に対する小沢グループの反発は避けられない。消費税問題を抱える政権としては、菅政権当時のような党内対立が再現するようだと、政権基盤の弱体化、社会保障と税の一体改革どころの騒ぎではなくなる。首相と防衛相が会期末の9日まで強気を通し続けられるかどうかは分からない。会期延長がなければ、公務員制度改革や郵政改革などの重要法案は審議未了で終わり、またも民主党政権の重要法案処理の先送りが浮き彫りとなる。

 野田政権発足以来、閣僚の不規則発言や誤解を与える発言が相次いでいる。旧政権時代から閣僚のスキャンダルや問題発言が閣僚の更迭につながったことは多い。それ故、当時は組閣や内閣改造に当たっては「身体検査」と呼ばれる、閣僚候補の過去の“不始末”の調査が行われた。ところが民主党政権が誕生して以来問題になるのは、閣僚の不規則発言である。 防衛相に就いた途端、「私は安保問題に素人」と言った一川氏は、“炎上”する普天間移設問題の原点とも言える沖縄の少女暴行事件について、「(私は)詳しくは知らない」と国会答弁したのは、時期も考えない論外な答えだし、防衛相としての資質が問われるものだ。

 不規則発言は一川氏にとどまらない。国政を預かる以上、「政権不慣れだ」、「にわか大臣だ」などと言って済まされないが、民主党政権の弱点はこれからも収まりそうにない。旧政権当時の「身体検査」に替わって、野田政権は「資質検査」が欠かせないようだ。もっとも、野田政権には政治献金の不透明さも漂っている。それも解明しなければ、「政治とカネ」で偉そうなことは言うべきではない。とにかく、野田首相はTPPや財政再建で総論的な方向性は自信たっぷり語るが、具体的な処方せんは言わない。総論あって各論なしである。外(外国)に向かって語るが、内(国内)に対して説明しないようでは、国民の信を得ることはできない。いつになったらそのスタンスを変えるのか聞きたいものだ。(おわり)
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