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2011-12-12 06:53

小沢の反消費税路線は、「福祉なくして、政局あり」

杉浦 正章  政治評論家
 基本的にはエゴの極みである政治家の言動にも、幾ばくかは国家・国民への目線があるものだが、いまや消費税反対の中核となった民主党前代表・小沢一郎の姿勢だけは、「質が悪い」の一言に尽きる。端的に言えば「福祉なくして、政局あり」であり、政治姿勢としての「国民不在」がここに極まった。小沢に扇動されて、深い思慮もなく消費税反対署名に乗り出す民主党議員らも度し難い。2012年度税制改正大綱の決定を受け、民主党は週明けから消費増税を巡る論議を本格化する。首相・野田佳彦は、増税素案を「年内めどに決定」と述べており、政権内の論議は本格化する方向だが、局面は緊迫の一途をたどる流れだ。何故かと言えば「消費増税小沢の乱」が待ち構えているからだ。小沢は11月中旬から、観測気球的に消費税反対発言を繰り返したが、次第にエスカレートさせている。しまいには「今消費税を上げれば、党は2つに割れる」とまで言ってすごんでいる。

 12月11日も「消費税などの増税は、少なくとも政権交代のときに我々が言っていたこととは違うので、強行するなら『それはちょっと違うのではないか』と言いたい」とのべ、公約を盾にした反対論をぶった。しかし、これは建前論であり、誰が見ても破たんしたマニフェストに固執するのはおかしい。小沢の狙いについては当初から、消費増税の実施が早期解散に直結し、小沢支持グループの雲散霧消につながることにあると指摘してきたが、この見方は今も微動だにしていないと思う。総選挙イコール「小沢陣営の壊滅」であり、小沢の政治家としての生命が危うくなる瀬戸際なのだ。もともと小沢は、消費税増税論者であったはずだ。忘れもしない1994年2月3日、当時の首相細川護煕がもの狂いでもしたかのように、突然未明に記者会見して、消費税の税率を当時の3%から7%に引き上げて、国民福祉税にするという構想を打ち出した。まさに「殿ご乱心」だが、振り付けたのは当時大蔵事務次官・斉藤次郎に理論付けさせた小沢に他ならない。

 それが、民主党政権になると、政権交代狙いで、消費増税などはかなぐり捨てて、2年前の選挙公約で消費増税を否定して、政権を奪取したのだ。しかし、財政の実情は小沢が増税を必要とみた1994年とは比較にならないほど窮迫しており、現段階での反対論は、まさに根拠がない。小沢は口を開けば「党が割れる」、「民主党員を無視し、ばかにすると必ず大きな鉄槌(てっつい)が下される」と大げさだが、それではいかにして社会保障を維持するか、については全く語らない。要するに、消費税を自らの政治権力維持の道具としてのみ使っているのだ。小沢の唯我独尊路線を突き詰めれば、国家財政はギリシャ、イタリアのように破たんし、年金の縮小、医療制度の崩壊、福祉事業の後退は目に見えている。問題は一知半解の小沢チルドレンだけでなく、中間派を含めた一般民主党議員の中にも、小沢の扇動に乗って盲目的な反対論が台頭してきていることだ。

 小沢側近は「200人は集まる」と言うが、200人と言えば、昨年の代表選で小沢が獲得した数字に他ならない。しかし、いくら民主党内でも、消費税で小沢の手のひらで踊るような議員が200人にも達すれば、まさに責任政党としての立場の放棄に他ならない。いずれにしても、これまでは少しは愛嬌のあった小沢政治だが、今回ばかりは邪道へと踏み込んだ。問題は、党の要の幹事長・輿石東が野田と小沢の間でどう動くかだが、野田がまとめようとする消費増税素案を、党ではまとめずに、先送りして対応することを検討しているという。触らぬ神に祟りなし戦術だが、党内は収まっても、野党の猛反発は必至だ。野党は政府だけが素案を作って与野党協議に提示しようとすれば、確実に「味噌汁で顔を洗って、おとといおいで」とはねつけるだろう。このような政治情勢を見る場合は、単純化した方がよい。「正義か、邪悪か」の戦いで見るのだ。そうすれば小沢の邪悪ぶりが鮮明に浮かび上がってくるのだ。紆余曲折はあっても、最後には正義が勝つ。
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