国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2012-01-10 10:04

(連載)北朝鮮を存続させている国際構造を見よ(1)

酒井 信彦  日本ナショナリズム研究所長・元東京大学教授
 北朝鮮の金正日総書記が、12月17日に急死し、それが19日に公表された。たちまち日本でも大騒ぎになって、マスコミは新聞もテレビも大報道に明け暮れている。しかし私には、それほどの大事件とも思われない。そもそも金正日は、国民の命を軽んずる我がまま男かも知れないが、強力な独裁者なのであろうか。その父親・金日成ですら、本物の独裁者であったヒトラー、スターリン、毛沢東などには、遥かに及ばない存在であったのだから、金正日などさしたる独裁者ではないであろう。

 現在の世界において最も不幸なのは、亡国の運命に陥っているチベット人やウイグル人であるが、自前の国家を持ちながら悲惨な状況にあるのが、北朝鮮の国民である。その国家が、大量の餓死者が発生する「この世の地獄」国家であるからである。そしてこのようなトンデモ国家が出現するに当たっては、諸外国が関係した、それなりの歴史的な経緯があることを、知っておかなければならない。

 北朝鮮は、第二次大戦後の朝鮮半島の分断によって成立した。すなわちソ連が占領した所が北朝鮮に、アメリカが占領した所が韓国になったわけである。ちょうどヨーロッパにおける、東西ドイツの分断と同じである。この朝鮮半島の分断の責任を日本の統治に求める、驚くべき歴史解釈をする日本人がいるが、ソ連が不可侵条約を破って参戦しなければ、分断など起こりえなかったのであり、したがってソ連に参戦を求めたアメリカにも相応の責任がある。

 そして韓国・北朝鮮両国が成立して間もなく、朝鮮戦争が勃発した。北朝鮮が韓国を併合しようと、軍事行動を起こしたのである。北朝鮮軍の快進撃によって、韓国は消滅の危機に直面したが、アメリカを中心とする国連軍が盛り返し、今度は逆に北朝鮮が追い詰められて、消滅寸前となる。このとき国境を越えて、中共軍が参戦して、結局以前とほぼ同様な分断状態に戻った。つまりこの時、中共軍が参戦していなかったら、北朝鮮は消滅しており、今日の北朝鮮問題は存在していなかったことになる。その意味で中国の責任は巨大である。

 朝鮮戦争に関しては、忘れられがちな事実であるが、今でも休戦状態が続いているのであり、完全に終結しているわけではない。またこの戦争によって、朝鮮民族同士が殺し合い、南北あわせて400万人と言う多大な死者を出した。これは当時の朝鮮人の人口3000万人の一割を超える莫大な犠牲であり、朝鮮民族の歴史上、最大の悲劇である。朝鮮人が、日本の統治時代を執拗に追及し続けるのは、この悲劇から目をそらせる意味もあるのであろう。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム