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2012-01-23 00:39

(連載)首相の強気発言の真意は?(2)

尾形 宣夫  ジャーナリスト
 ではなぜ、野田政権はやみくもに攻勢に出たのだろうか。そのヒントの一つに今週初め(1月16日)の民主党大会がある。党大会で野田首相が言ったことを思い出してもらいたい。眼帯をつけた首相は壇上から、消費税増税法案の成立後に衆院の解散・総選挙を実施する考えを重ねて強調、さらに野党が抵抗して「法案をつぶしたらどうなるかを考えていただく」と語り、与野党協議に応じようとしない自民、公明両党を強く牽制した。要するに、話し合いに応じないならそれはそれで仕方がない。俺たちは衆院で強行採決も辞さない。参院に法案を送って野党の無謀な抵抗ぶりを国民に見せ付けてやる、というわけだ。

 政権発足以来、野党との真摯な対話を心掛けてきたはずの野田政権の変貌にも驚くが、首相は「君子は豹変する」とまで言ったのだから、もはや「ドジョウのように愚直に歩む」ことはやめたと心に決めたのだろう。先の臨時国会は、首相の委員会出席が前例がないほど多かった。首相自身が委員会出席を買って出たからだが、本来の国対担当者が十分機能しなかったことが、その背景にある。

 ただし、党大会での首相の言葉が額面どおりなら、政権は野党と全面対決となるが、政治はそれほど単純ではない。首相の強気な言葉は、半分は「党内向け」と見るべきではないか。周知のように、消費税増税を含めた一体改革に対する党内の反対は強い。特に消費税増税については離党者が相次ぎ、党内でも100人を超す増税反対議員が政権の足元を脅かしている。造反議員がどんな行動に出るか断定できないが、対野党折衝の足元が政権の方針に異論を唱えている状況では、実りある野党折衝は期待できない。それゆえ首相は、敢えて強気な言葉を使い、一見野党に対して言った形を取りながら、党内の引き締めを狙ったのではないか。

 語り口も野党を念頭に置いたというよりも、身内の「騒がしいグループ」を思いながらのものだった、と筆者(私)は受け止めた。政権そのものが「乾ききって」、何が飛び出すか分からない「高湿度」通常国会に臨もうとしている。「最善・最強の布陣」どころか、「異常乾燥」が出っ放しが政権の実態である。24日に通常国会は開会する。一体改革はもとより、政策論議より、解散・総選挙含みの気の抜けない緊張した政局となることは間違いない。(おわり)
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