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2006-07-28 00:06

東アジア共同体への主導権

田島 高志  大学院教授
 昨27日の村井雅子さんの投稿「ASEAN+3サミットと東アジア・サミットは両立するのか」を尤もな問題提起だと感じながら読みました。「ASEAN+3とEASとどちらが主役なのか」「二つは補完関係なのか競合関係なのか」という問題です。1997年以来続いているASEAN+3は、世界経済のグローバル化と相互依存関係の深化の中で、東アジア地域の一層の発展のためには、地域協力を進めることが重要であることを認識し、これまで既に17分野で48の協議体をつくり、具体的な方策を検討し、可能な点から実施を進めて来ました。これは共同体への機能的アプローチと言われます。ところが、昨年12月EASを開催することがマレーシアの主張で突然決まり、参加国に関する議論が行なわれた結果、共同体構築には機能的協力に加え、開かれた地域主義と民主主義などの普遍的価値の尊重という原則も重要であることが指摘され、各機能的分野でも関係の深い豪州、NZ、印も招待される結果になりました。

 現在ASEANの国々は、東アジア共同体への実質的な歩みはASEAN+3が中心であり、EASは今後の共同体構築への道程などについて幅広く関係国の意見交換を行なう場であると説明しています。このような考え方からすれば、ASEAN+3とEASとは相互補完関係にあるということが出来るでしょう。しかし、EASは、まだ1回開かれただけであり、今後どのような役割を果して行くようになるかは不確定な点が多くあります。ASEAN、日、中、韓、豪、NZ、印がそれぞれどのような主張をするかにより、今後の役割が次第に決まって行くと思われます。東アジアの経済や安全保障の面で重要な役割を果たしている米国と将来の共同体との関係を如何に組み立てるかも検討して行く必要があります。

 東アジアは、7月17日の田村久雄さんの投稿にも指摘されている通り、社会的、文化的、歴史的に多様であるのみならず、政治制度的にも異なる国々の集合です。従って、キリスト教文明を中心に共通の価値観を容易に持ち得たEUのような共同体を直ぐ形成することは不可能です。EUでさえ50年以上の道程を経てようやく現在の姿があります。しかし、東アジアにおいても今後の発展には地域協力が必要であるとの基本点に立って、例えば経済面や非軍事的安全保障面から始めて具体的に可能な分野と方法と態様を探求し、徐々に段階的に共同体へ向けての動きを推進して行くことが肝要であると思います。
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