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2012-01-29 00:35

「議事録なし」という民主党政権の恥ずべき無能ぶり

尾形 宣夫  ジャーナリスト
 政治が現状を憂いて、国民に苦しみを分かち合おうと呼びかけるのは間違いではない。だが、その政治に「信」や「真(まこと)」がなかったらどうだろう。あるいは、政治が当たり前に果たすべき責任・義務を放棄したら、国民は救われない。そういった政治の実体が野田政権の下で明らかになった。いわゆる、政府の大震災対応がどう行われたかをまとめた「震災議事録」がなかったのである。民主党政権の体たらくを問わずにはいられない。どうしてこうも、国民の不信を募らせる問題が次々とあらわれるのだろうか。

 大手メディアが伝えているところによれば、政府が設置した震災対応の会議は15あるが、このうち「各府省連絡会議」など5会議は要点をまとめた議事概要のみがつくられ、「政府・東京電力統合対策室」「被災者生活支援チーム」「電力需給に関する検討会合」など10会議では概要も未作成だったという。平野復興担当相は1月27日の会見で、緊急対策本部の担当者から「記録に残す習慣がなかった」と説明があったと言ったが、対策本部の意識がこんな具合なのだから、ほかの会議は推して知るべしである。大体、公文書管理法は、重要な会議の意思決定過程などを検証できる文書作成を義務づけている。大惨事直後とはいえ、「忙しかったから…」などは言い訳にもならない。

 先日も藤村官房長官は「対策におおわらわで議事録を書く時間がなかったようだ」と語っていたが、信じ難いほど暢気な内閣のスポークスマンである。あの未曾有の大惨事だからといって、議事録がなければ、当時の政府の動きを検証する材料が何もないとなってしまう。わずかに「要点」をまとめたのは、各府省連絡会議など5会議だが、事故対応の具体策を話し合った会議は、概要どころか何も作成していなかったというから、開いた口がふさがらない。「要点」といったところで、何が書いてあるのか分かったものではない。何もないと言えないので、苦し紛れに「要点」と言ったのかもしれない。「議事次第」はあったそうだが、議事次第などは何の役にも立たない。野田首相や岡田副総理ら政権首脳は、手元に残ったメモや記憶で議事録を作成、2月中にまとめるよう指示したようだが、あの「3・11」直後から数カ月間の最も緊張した時期の永田町、霞が関、さらには関係被災地の様子を記憶をたどりながら正確に再現することはできるのか。

 刻々と変わる状況を時系列どおり蘇らせることは至難の業だろう。となると、曖昧な記憶は議事録として残しにくいし、役人の常として「きわどい雰囲気」の再現は期待できそうもない。後々責任を問われるような記述は書くはずもない。とはいえ首相指示だから、関係府省の官僚は「議事録」の取りまとめに全力を尽くすはずだが、後世の笑いものにならないよう、「後の祭り」の議事録などと烙印を押されないよう、野田首相は何度差し戻してもいいから、真実に近い議事録の完成に責任を持つべきだろう。こうして見ると、「議事録なし」は民主党政権の恥ずべき無能ぶりを白日の下にさらしたということである。政治にリーダーシップなく、政治理念・哲学の欠けた政権に「国を語る」資格はあるのか、と問いたい。消費税増税、震災対応で波乱が避けられない野田政権に、またも政権の存在を問う重大な事案が舞い込んできた。 
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