国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2012-01-30 06:53

維新の会へ“ただ乗り”狙う「後期高齢新党」

杉浦 正章  政治評論家
 新党というとわくわく感が多少なりとも生ずるものだが、「いや~な感じ」が先行するのはなぜだろうか。ちょっと考えてみれば分かることだ。老獪(ろうかい)政治家による、“あやかり商法”が根底にあるからだ。「石原新党」は、自らの人気・力量に自信のない後期高齢政治家たちによる「大阪維新の会」への「薩摩守忠則」(ただ乗り)が本質だ。離党へとふらつく民主党若手への誘い水でもある。そこには理念も、定見もなく、「政局にらみの政局作り」だけが目立つのだ。いわば政策もなしに野合を目指す老害新党だ。マスコミは、朝日が「亀井静香の流す怪情報」(石原慎太郎)に乗せられたのか、派手に「3月新党」を報じたが、永田町は総じて「本当に出来るのかいな」と懐疑的だ。しかし評論家の中には、岩見隆夫のように「細川新党だって、第5党党首が首相になった」と「石原首相」を手放しで期待する発言をテレビでしている向きがいる。しかし、一応熊本県知事時代からカリスマのあった細川護煕と石原は全く異なる。石原が都知事になって何をやったか。目立ったのは“文士の商法”で開業した「新銀行東京」を、わずか3年で1000億円の累積赤字を抱え、事実上破たんさせた、都政史上にのこる大失政だけだ。都民一人当たり3000円に相当する400億円もの追加投資でしのいでいるが、これで国政をやられてはたまったものではあるまい。

 新銀行東京問題では石原の責任はうやむやになったままだ。国政なら確実に内閣不信任案可決だろう。その石原を自民党福田派時代からの付き合いで担ぎ出そうとしているのが国民新党代表・亀井静香だが、背景には国民新党の埋没という危機感がある。看板の郵政改革法案は成立のめども立っていないし、首相・野田佳彦は消費増税路線一辺倒で、亀井が反対を唱え続ければ、連立解消も辞さぬ構えだろう。党内でも亀井の新党への動きにに「オオカミ老人がまたか」と反発が生じており、亀井は四面楚歌が実情なのだ。平沼赳夫にいたっては、第3極になるはずだった「立ち上がれ日本」がなかなか立ち上がらず、存在感が希薄そのものだ。この旧福田派の3人は石原が79歳、亀井が75歳、平沼が72歳で、平均年齢74.33歳。年が若ければいいと言うものでもないが、この激動期に「後期高齢新党」では、夢も希望もあるまい。焦点の消費増税についても、石原が推進、亀井が絶対反対では、まとまるわけがない。

 その“おれがおれが老人”たちの狙いは、関西での「橋下ブーム」だ。石原は2月に橋下と会談を予定しているが、問題は“賢い”橋下が老獪の説得に乗るかどうかだ。石原は出来れば「首相の座」狙いで、橋下の力を“活用”しようと考えているに違いない。石原が3月の新党結成を断言しないのは、橋下が乗るかどうかが分からないからだ。首相・野田佳彦が、橋下との連携を探るこれらの動きについて「改革者として注目するところ大だが、シロアリがたかることがないよう祈ってやまない」と痛烈な一撃を食わせた。見事なタイミングでもあった。シロアリが誰を指すのかだが、シロアリには2種類ある。「後期高齢シロアリ」と、「こまっちゃくれシロアリ」だ。「こまっちゃくれシロアリ」のみんなの党代表・渡辺喜美は「シロアリがみんなの党のことを言っているなら問責に値する」と激昂したが、誰がみてもみんなの党を指しているのだから、問責決議に同調する野党などいない。

 「後期高齢シロアリ」が舌なめずりしている42歳の大阪市長・橋下は「この世界は気を許したら本当に食われちゃう。首相自らがメッセージを出してくれるなんてめちゃくちゃうれしい。シロアリに食われないよう気をつけます」と、素直に警戒感をあらわにしている。維新の会そのものが海のものとも山のものともつかない一地方の政治現象であり、これを見極められないから、中央政界が“念のために”ちやほやしているのである。橋下も利口な男だからその分限をわきまえているのだろう。石原の接近は、橋下を担ぐと言うより、まず自らが最後の死に花を咲かせたいという、飽くなき権力追及意欲が根源にある。自治体の長を長くやっていると、どうしても“裸の王様”になるのだ。橋下が自分の中央政界への転身を否定していることが、亀井や石原の狙いでもある。要するに、橋下は、自分の人気を活用しようとする中央政界の年寄りの冷や水というか、火遊びに踊らされてはなるまい。このままでは理念なき野合につき合わされることになる。問題は、反野田姿勢を強めている小沢一郎が乗るかどうかだが、石原新党も、維新の会も、“小沢おんぶお化け”は敬遠だろう。これもイメージが悪すぎて、新党という感じではない。当面小沢は若手の離党引き留め対策で大変だろう。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム