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2012-03-26 06:56

なし崩しで“原発ゼロ”長期化の危機

杉浦 正章  政治評論家
 ここに来て超重要政治課題2つが待ったなしの決断を迫られている。1つは、消費増税法案の閣議決定。他の一つは、福井県大飯原発3、4号機の再稼働問題だ。同原発再稼働は月内にも首相・野田佳彦が決断する流れだが、問題は首相が決断しただけでは進展しないところにある。政調会長・前原誠司も3月25日「地元の納得が得られるかどうかが大きなポイント」と新たなハードルを設定している。この条件を5月5日に予定される北海道・泊原発3号機の停止までにクリヤしなければ、26日午前零時に東電の全原発が停止したことから、稼働する原発はゼロになる。稼働原発がゼロとなるか、大飯原発の2基でも稼働している状態にするかどうかは、今後のエネルギー政策に決定的な意味合いを持つことは言うまでもない。消費増税法案の閣議決定に関しては、野田が「不退転の決意で、政治生命を懸けて、命を懸けて、この国会中に成立をさせる」と述べたことで、元代表・小沢一郎との第1ラウンドの勝負は事実上ついた。野田は間違いなく早期に閣議決定に持ち込み、法案を国会に提出する方向だ。問題は我が国のエネルギー安全保障に決定的な重要性を持つ原発再稼働だ。第2次大戦前はABCD包囲網で石油の輸入をストップされ、国家破滅に至ったが、今度は自分で自分の首を絞める「脱原発」包囲網の輪が刻々と縮まりつつある。東電柏崎刈羽原発6号機の停止で、残りは北海道の泊原発だけとなった。

 従って、エネルギー問題の焦点は、原発をゼロにしようとする勢力と、2基でも再稼働させて将来への布石としたいと考える勢力うの戦いとなる。すべての元凶は、昨年7月に窮地に陥った首相・菅直人が、延命策のように玄海原発の再稼働に待ったを掛けたことにある。ストレステストを要求したのだ。脱原発派は、NHKや朝日新聞のキャンペーンに鼓舞されて、勢いづき、各地で反対の火の手を挙げた。菅は、首相・鳩山由紀夫が沖縄の普天間移設について「国外すくなくとも県外」と究極の暗愚発言をしてしまった、のと勝るとも劣らぬ大失政を繰り返したのだ。原子力安全委員会が関西電力大飯原子力発電所3、4号機のストレステストについて、23日“ゴー”の検証結果を表明しても、なお脱原発キャンペーンの勢いは止まらない。NHKの原発偏向報道の顕著な例に挙げるなら、同日午後7時のニュースで地元住民の声を反対論ばかり3例を挙げ、賛成論を紹介しなかったことだ。テレビの放映する国民の声ほどそのテレビ局の偏向状況を判断する基準となるものはない。都合のよい方向へどうにでも“操作”出来るからだ。現に、おおい町の町長・時岡忍が「一連の安全確認作業で一つ階段をのぼったと受け止めている」と再稼働是認に前向きの発言をしたにもかかわらず、反対論ばかりを紹介したのだ。まさに亡国のエネルギー政策偏向キャンペーンだ。

 公共放送が先頭を切って偏向しても、近ごろの国会はだんまりを極め込んでいて、だらしがないの一言に尽きる。朝日もNHKも“編集貴族”らは、反原発キャンペーンが即“電気料金値上げキャンペーン”であることが分かっていない。反対派は、菅が首相在任中は、もっぱら自然エネルギーの確保で補えるという誤った見方で盛りあがっていたが、当時から筆者が指摘したように、エネルギー使用量全体の1%を抜け出るような画期的な自然エネルギーなどどこにも見当たらない。いまだに展望も開けない。最初の福島ショックから立ち直った世界の原子力発電は総じて復活の方向となった。中国などは原子炉200基建造計画にまい進しており、中東や東南アジア諸国も、事故を経験した日本の原発をかえって導入したがる機運が生じているのだ。中国には新幹線事故の例もある。日本の安全な原発を売り込む方が重要だ。いったん原発事故があれば放射能物質が日本に黄砂の如く降り注ぐ。こうした中で野田は、近く大飯原発再稼働を決断する意向を固めている。しかし要注意なのは、前原ではないが「言うだけ番長」に逃げ込む危険性があるのだ。というのもたとえ関係閣僚で再稼働を決断しても、地元説得という大問題が残るからだ。

 加えて、4月は予算関連法案、消費税法案にかかりっきりになる可能性の方が大きい。野田は、地元説得に経産相・枝野幸男を同月上旬に派遣する方針のようだが、かつて枝野は、今夏の原発稼働ゼロを他人事のように予言しており、本気で説得出来るかどうか疑わしい。野田本人も現地を説得する意気込みを示しているが、事前の根回しで方向が見えないまま地元に入る勇気があるかどうかも疑問だ。したがって事態は、53基が停止したままでずるずると推移して、5月に至り、ついに泊原発も停止して、国内すべての原発がことりとも音がしなくなる、という事態になり得るのだ。冒頭指摘したように、原発稼働ゼロか、2基でも稼働しているかどうかの政治的な意味合いは、月とすっぽんほどの差がある。ゼロとなれば、脱原発勢力はゼロが“既得権”となり、これを死守しようとするに違いない。そのうちに解散・総選挙ともなればますます原発再稼働が争点となり、各政党は無責任にも目先の票獲得にむけて「脱原発」か「非原発」か「停原発」論に陥るだろう。エネルギーの不足はホルムズ海峡危機ともなれば目も当てられない状況となり、産業の海外移転に拍車がかかる。ゼロか、2基稼働かは、原発を含めたエネルギーのベストミックスに向けて不可欠の意味を持つ。野田は消費増税だけでなく、原発再稼働にも命を賭けよ。
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