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2012-04-03 09:55

(連載)消費増税より相続資産からの課税強化を(1)

鈴木 亘  学習院大学教授
 8日間にわたって紛糾した民主党の事前審査を強引に打ち切り、いよいよ消費税増税法案が強行突破で閣議決定された。そのあまりの強引・剛腕?なやり方に、消費税引き上げ慎重派の政務三役や党役員達が次々と抗議の辞表を提出し、連立を組む国民新党までもが分裂する騒ぎである。つい先日の代表選で、「もうノーサイドにしましょう」と党内融和を図っていた野田総理とは、とても同一人物とは思えない豹変ぶりである。

 なぜ野田政権は、このように強引で稚拙とも言える政治手法を取っているのか。この閣議決定までの過程で、改めて白日の下に曝け出されたことは、この野田政権が、財務省によって実質的に支配されている政権だと言うことである。いや、野田政権だけではなく、民主党の執行部すら完全に財務省にコントロールされていると言えよう。鳩山政権から菅政権になり、政治主導から官僚主導になったと言われる。菅政権末期は官僚主導から官僚丸投げになったとの批判もある。しかし、この野田政権は、それどころではない。官僚支配、財務省支配の「羽交い絞め内閣」なのである。

 まず、「社会保障と税の一体改革」と言いながら、最終的には、社会保障改革などそっちのけで、財務省が望む消費税の増税だけを露骨に優先する。国会論戦中、一時話題になった民主党の年金改革案などもはや影も形もなくなってしまった。また、消費税引上げまで2年間もの余裕があり、別段、拙速な議論は全く必要ないにも関わらず、目の前に「締め切り」を設定して、無知な政治家を追い込むことは、財務官僚の常套手段だ。

 さらに、景気弾力条項の数値目標を拒否させたり、追加増税条項を入れようとしたことも、財務省の意向に他ならない。1年半後に選挙があることを考えれば、実質2%、名目3%程度の成長戦略を掲げ、日銀や財務省に不退転の努力をさせる方が政治家にとっては有利なはずである。しかし、もはやそれすら許してもらえないのが野田政権の実情なのだ。また、追加増税条項というプログラム条項も、2009年に成立した税制改正関連法の附則104条が成功体験となった財務官僚の知恵である。法律上は決して政策を拘束するものではないプログラム条項であるが、今回、野田首相はまんまと、それに乗った。財務官僚はそれに味をしめたのである。(つづく)
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