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2006-08-14 11:28

軍事技術漏洩防止の体制を強化せよ

浜本聡史  会社員 
 日本のIT産業は世界に冠たるものがありますが、その一方では軍事転用可能な先端技術の漏洩、流出事件が相次いでいます。特に軍備拡張を目指すロシア、中国、北朝鮮等への機密漏洩は日本にとって脅威であり、外国為替及び外国貿易管理法(外為法)の改正だけでは対処しきれない事態になっていることを一考すべきです。
 
 この8月に入ってからも続々と機密漏洩、流出事件が発覚しています。在日ロシア通商代表部員が大手精密メーカーの元研究員と共謀し、軍事に転用可能な光ファイバー通信関連部品を社内から盗み出した疑いで書類送検されましたが、警視庁公安部が出頭要請していたロシア通商代表部員を日本から出国させていたことも問題です。政府は十年前にもスパイ容疑で日本を退去させたロシア大使館一等書記官の再入国を見逃す失態を演じています。また、ヤマハ発動機が軍事転用可能な無人ヘリコプターを中国人民解放軍系企業に渡していた事件もありました。専門家によれば、神経ガスや生物化学兵器を搭載し噴霧することも不可能ではないと言われています。三次元測定器を中国等に輸出した精密機器会社ミツトヨの事件も記憶に新しいところです。

 これらの一連の事件は、日本がスパイ天国になっている実態を露呈したものといえます。2004年の外為法改正によって、国連安保理の決議やアメリカの合意といった国際的な要請がなくても、日本独自の判断で経済制裁措置を取ることができるようになったのは改善ですが、しかし、これだけでは必ずしも機密漏洩の抜本的な問題の解決になっているとは言えません。数日前にも、在日朝鮮人が経営する企業が、生物兵器を製造可能な凍結乾燥機を北朝鮮に不正輸出していたことが発覚しました。軍事目的に転用されるとの認識がありながら北朝鮮の軍関係企業の依頼で、日本政府の許可を得ずに、凍結乾燥機を北朝鮮に輸出していたのです。日本は外為法にのっとり、速やかに北朝鮮に対して経済制裁を行うべきですが、経済制裁を強化すれば、問題が解決するとは限りません。過去にも、北朝鮮の工作船からは、日本製のGPS受信機やレーダー等が発見されていますし、不正輸出の摘発は後を絶たないわけです。

 国内で開催されるIT展示会では、ロシアや北朝鮮の産業スパイが商社員の名刺をもって説明員に接近し、機密情報を現金で買い取るなどのケースが問題になりましたが、警視庁が容疑を裏付け日本企業の社員を逮捕するに至るのはほんの一部です。金儲けのためならなんでもするという日本の一部民間企業の行動は、もっと厳しく社会全体から指弾されなければなりません。同時に日本政府は、軍事機密流出を水際で未然に防ぐための行政指導、法整備を防衛、安全保障の観点からいっそう踏み込んで強化するべきです。2004年に導入された「キャッチオール規制」という大量破壊兵器関連品目の包括的輸出許可制度や、「外国ユーザーリスト」という大量破壊兵器開発の懸念のある外国企業・団体リストの公表制度は、もっと活用すべきです。欧米諸外国の事例に学ぶことも大切です。こうした議論を深める時期を逸してはなりません。
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