国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2012-05-28 10:10

プーチン政権新内閣は「たらい回し内閣」!

飯島 一孝  ジャーナリスト
 プーチン露大統領は5月21日、新内閣の閣僚名簿を決定した。21の閣僚ポストのうち15ポストを交代させたが、中心となる副首相7人のうち新任は2人だけで、大統領と首相のように「たらい回し」している形だ。また、旧KGB出身幹部らの「シロビキ」を代表するセーチン副首相は内閣から外れるものの、大統領府の一員として残る予定で、チーム・プーチンの陣容に大きな変動はなさそうだ。今回は、これまでになくプーチン大統領が力をいれて組閣したとされる。通常、首相のメドベージェフ氏が組閣名簿を作成して大統領がそれをチェックする形だが、今回は大統領が自ら閣僚候補を面接して最終決定したという。3期目にかけるプーチン氏の意気込みが伝わってくる感じだが、米国での主要国サミット(G8)に欠席する理由として「新内閣の組閣」を上げたため、つじつまを合わせたとの見方も出ている。

 新内閣の特徴を上げると、第1に、セーチン副首相らプーチン流強権政治の担い手とされてきたシロビキ出身者がほとんど姿を消したことだ。それに代わってリベラル派のドボルコビッチ大統領補佐官を第一副首相(経済担当)に任命するなど、経済関係の閣僚に実務官僚を多く登用した。これは、昨年暮れ以来の反プーチン旋風に配慮した人事とも言える。第2に、交代するとみられていたセルジュコフ国防相、ラブロフ外相、ロゴジン副首相(軍需産業担当)ら外交・安保関係の閣僚を留任させたことがあげられる。今後も欧米に対し、「強いロシア」を主張していく方針に変更がないことを示したものとみられる。

 第3に、第1次プーチン政権時代からクレムリンの「イデオロギー担当」としてプーチン氏を支えてきたスルコフ大統領府副長官を昨年暮れ、副首相に抜擢し今回、内閣官房長官を兼務させたことだ。西側からロシア民主主義の異質性を指摘された際、国益を重視した「主権民主主義」を打ち出した“切れ者”で、メドベージェフ首相の監視役も務めることになりそうだ。プーチン氏は2000年に初めて大統領に就任した時から、地元のサンクトペテルブルクや旧KGBから友人、後輩などを多数登用し、チーム・プーチンを形成してきた。その中核メンバーは約50人といわれ、仲間内で重要なポストを回している。今回もこのチームのメンバー多数が閣僚ポストを占めている。

 さらに、プーチン氏は更迭したセーチン副首相、ワイノ内閣官房長官、レビチン運輸相らチームのメンバーを大統領府に集め、補佐官や顧問に起用する方針だ。大統領府長官はKGB時代の同僚であるイワノフ氏が務めており、ここをプーチン政権の「司令部」にする意向かもしれない。今回の組閣からプーチン大統領は、これまで以上に経済発展と富国強兵を推進し、「大国復活路線」の総仕上げを目指していることが明確になった。だが、反プーチン勢力が増える状況の中で、エネルギー資源依存から脱却し、経済を現代化する道は険しい。柔道で鍛えた心身を最大限発揮して難局を乗り切れるかどうか、注目していきたい。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム