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2012-06-18 13:43

「日本国債バブル」とジャパン・リスク

大井 幸子  SAIL代表
 欧州危機の影響で、グローバルな投資マネーはギリシャやスペイン、エマージングといったリスクの高い市場からドイツ、日本、米国の国債といった安全な資産へシフトしてきた。日本国債(JGB)は海外からの需要で値上がりし、しかも円高が進み、ダブルでしこっている。いわば「JGBバブル」の様相を呈している。6月17日にギリシャで再選挙があり、20日には米国連銀の金融政策が決定される。ギリシアで反緊縮を掲げる急進左派連合が勝利すれば、欧州危機に拍車がかかり、失業率が改善しない米国ではさらなる金融緩和(QE3)実施の可能性が高まっている。

 米国が金融緩和に踏み切れば、投資マネーは国債などの安全な資産から米国株やハイイールド債、不動産などのリスク・アセットへシフトすると見込まれている。こうしたグローバルな投資マネーの行動パターンは、繰り返されるだろうか?多くの投資家同様、私も、欧州危機の収束には数年以上かかるとみている。ユーロという単一通貨の制度を止めて、欧州の金融サービス全体の仕組みを再編成するには、大掛かりな手続きと労力、時間とコストがかかる。政治家や政策決定者は自分の保身から、火中の栗を拾うようなリスクを取らない。小心者は、危機がそのうちに去ってくれて、次の選挙での再選を望む程度の根性しか持ち合わせていない。

 長引く欧州危機。とすれば、成長の見込めるマーケットは米国と中国だ。両国では、中央銀行も、政策決定者も、実にプロアクティブだ。中国は7日に利下げを行ったし、グローバルな投資家は米中の速やかな動きを高く評価している。20日のQE3はあるのか?11月の米大統領選を睨んで、一段の緩和を行えば、バーナンキFRB議長は「FRBが中央銀行としての独立性を失う」と考えるだろう。既に米金利は相当に低い。そして、この4月からロムニー候補への選挙資金がオバマ陣営へのそれを上回って、活発に集まりだしたと報じられている。オバマ大統領が再選できるかどうかは不透明だ。

 QE3がなくても、私は円高基調がしばらく続くと思う。米国の景気回復が本格化する来年後半以降まで、ドル安のほうが米国にとって都合がよい。しかも、グローバルな投資マネーは、円で借入れて、ドル資産へ投資を続けている。円は借入コストが安いし、インフレ懸念がないため、好都合なファンディング通貨として重要が高い。これが大きな円高圧力になっている。円高で、日本の企業や個人の海外投資が活発である。外国企業の買収や海外事業での資本提携で、日本マネーは外へ出ていく。その一方で、日本の財政赤字削減や成長戦略への明確な指針が見えず、日本の政治的混乱に嫌気がさせば、グローバルマネーが日本から流出する可能性は常にある。日本には勤勉な国民がいて、モノづくりの基盤がありながら、日本から資本が逃げていく、これが「ジャパン・リスク」であろう。
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