国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2012-08-06 14:36

ロシアは、本音で日本の支援を求めている?

飯島 一孝  ジャーナリスト
 ロシアのプーチン大統領は7月28日、黒海沿岸の保養地ソチで玄葉光一郎外相と会談した。インタファクス通信などによると、大統領は日露間の貿易高をさらに増やすよう求め、その上で「もっとも敏感な問題(つまり北方領土問題)で交渉を続けよう」と提案した。大統領はあくまで経済優先を強調し、領土問題は“その次”との姿勢を崩さなかったようだ。日本のメディアは玄葉外相とプーチン大統領、ラブロフ外相との会談について「北方領土巡り応酬」(日経新聞)などと領土問題の話題をメーンに取り上げた。だが、ロシアのメディアは、日本側がプーチン大統領に秋田犬を贈ったのに対し、大統領が返礼に「シベリア猫」を贈るという話題を大きく取り上げた。プーチン氏の犬好きは有名で、すでに2頭を飼っており、日本からの秋田犬は3頭目という。

 相撲の決まり手に「猫だまし」というのがある。立ち合いの際、相手の目の前で両手を打ち合わせて驚かす奇策のことだ。秋田県の佐竹知事から秋田犬(メスの子犬、ゆめ)を贈られたので、今度はロシア側がシベリア猫を知事に贈るという話が公表され、懸案の領土問題が薄まってしまった印象が強い。大統領は、知事から「猫が好き」という話を聞き、シベリア猫のプレゼントを思いついたといい、プレゼント作戦でもロシアにしてやられた感じだ。日本のメディアはあまり触れていないが、プーチン大統領は今回の会談でロシアと中国間の貿易高と日露の貿易高を数字をあげて比較し、「日露関係は悪くない。貿易高も(リーマン・ショックの)危機前の水準には戻ったが、絶対額ではまだ少ない」と強調し、貿易高をさらに増やすよう要求したという。

 プーチン氏は大統領選直前の3月、外国メディアと会見した際、中国とロシア間の貿易高に比べて日本とロシア間の貿易高が少なすぎると不満を漏らし、この改善が北方領土問題解決の前提条件であるかのような口ぶりだった。今回の会談でもこの問題に言及したのは、9月のAPEC首脳会議を前に、改めて日本の政財界に経済協力関係強化のシグナルを送ったのだろう。さらに、プーチン大統領は玄葉外相との会談で、日本のパートナーがロシアでの仕事に満足できるよう、ロシアが出来ることはすべて行うことを力説。日本の自動車業界のロシア進出に関し、欧州地区だけでなく、極東地域でも計画を実現させるよう求めた。また、エネルギー分野でも協力できることを付け加えた。

 プーチン大統領が外国の外相と会談するのは異例で、3期目の大統領就任後では初めてという。大統領は反プーチン派を抱えて苦しい舵取りを迫られており、日本の支援を本音で求めているためではないか。こういう時こそ、日本側はプーチン政権に協力し、貸しを作るべきではないだろうか。野田首相の強力なリーダーシップを期待したい。 
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム