国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2012-09-16 01:37

(連載)国家意識・民族意識を完全に喪失した日本人(2)

酒井 信彦  日本ナショナリズム研究所長・元東京大学教授
 中国は今から30年前、1982年の第一次教科書事件以来、歴史問題を利用した日本人への精神侵略を、積極的に推進してきた。さらに21世紀になると、中国によって直接的に、日本の外交権を侵害する行動や、反日デモを使った日本攻撃が行われるようになる。愚かな日本人はすっかり忘れてしまっているが、02年には瀋陽領事館事件、03年に西安寸劇事件、04年にアジア杯サッカー事件、05年に極めて大規模な官製反日暴動、08年には日本の地で中国学生による長野争乱事件、10年には前回の尖閣事件、そして今年の尖閣事件と大使襲撃事件と、日本へのテロ攻撃と言うべきものが、連続して起こされてきた。そのつど日本側は強く抗議も反発もできず、不様な屈服を繰り返してきた。やり口は次第にエスカレートして、とうとう今回の事態に至ったのである。

 それにしても、大使襲撃事件に対する我が国の無反応振りは、まことに凄まじいものである。日本国家が最高度に侮辱されながら、それを屈辱と感じる人間が、一体どれほどいるのであろうか。世の中では政治の動向で大騒ぎしながら、日の丸が強奪された大使襲撃事件など、事件発生から二週間しか経っていないのに、完全に忘れられてしまっている。ところが一方では、スポーツの話になると、「ニッポン」の絶叫が響き、日本国旗・日の丸が打って変わって珍重される。しかしこれは結局、私が以前から主張している、「スポーツだけのナショナリズム」なのである。日の丸は要するに、スポーツの応援旗に過ぎないのである。

 その意味で現在の日本人は、強固な民族意識を持っていた幕末維新期の日本人とは、似ても似つかない、腑抜け民族に成り果てているのである。現在の日本では、維新が大流行であるが、精神状況は全く異なるのだ。保守派の人々は、日本人は優れた民族だというのが口癖であるが、幾ら昔は優れた民族であっても、現在が馬鹿であればどうしようも無いのである。国家にも民族にも、栄枯盛衰があるのであり、現在の日本人は明らかに極めて劣った民族であって、100年前の中国人・朝鮮人よりも、さらに遥かに劣っていると言わざるをえない。

 日本の現状を客観的の直視する限り、私は日本人の国家意識、さらにその根底の民族意識は、完全に死滅したと考えざるをえない。この日本人が自覚していない、日本人の精神の悲惨な状況を、最も良く理解しているのは、中国の支配者たちである。歴史問題で日本への精神侵略を開始したとき、彼らもこれほど成功するとは考えていなかったであろうが、時を経るにしたがって、日本人の精神がいかに堕落しているかを、正確に感知したのである。先述した、21世紀になってからの各種の攻撃は、日本人の精神がどこまでダメになったかを、刺激を与えてみることによってテストしていたのである。つまり日本人の国家意識・民族意識についての、生体反応テストである。大使襲撃事件でも、一向に燃え上がらない日本人のナショナリズムを観察して、日本人の民族意識の喪失を確認した中国人は、今後よりいっそう深化した日本侵略に突き進むに違いない。その先には日本国家の滅亡がある。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム