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2012-11-19 10:11

予想以上に深刻か、プーチン大統領の健康問題

飯島 一孝  ジャーナリスト
 プーチン大統領の健康問題は、わが国では野田佳彦首相の12月訪露延期との関連で報道されたが、ロシア側が日本の内政問題との絡みを示唆したこともあって軽視されがちだ。ところが、予想以上に深刻ではないかとの見方がロシア紙に掲載された。政治家の健康問題はどこの国でも隠したがるが、とりわけ独裁主義的国家では極秘にするケースが多いだけに、この見方を取り上げてみたい。この見解が掲載されたのは、11日付けの英字紙『モスコー・タイムズ(電子版)』で、筆者はモスクワで取材しているジャーナリストのビクトル・ダビドフ氏。記事には「プーチン批判をやめられない理由」とのタイトルがついていて、「民主国家では指導者の健康問題は家族や友人らの心配の原因となるが、独裁主義的な国家では国家の安定を脅かす問題になる」と指摘している。

 同紙によると、プーチン大統領の健康問題は、9月にウラジオストクで開かれたAPEC首脳会議で表面化した。プーチン氏はいつもと全く違い、足を引きずって歩き、明らかに痛みで顔を歪めていた。さらに、いつもは毎月4カ所ほど訪問するのに、この秋は10月の還暦の誕生日にサンクトペテルブルクに出かけた以外は、モスクワ郊外の公邸で過ごしていた。その後、トルクメニスタンで開催のCIS首脳会議やトルコ、インドなどへの外国訪問をキャンセルした。これはプーチン氏の背中の痛みを心配した医師の勧めによるもので、クレムリンの関係者によると、プーチン氏はコルセットを付けており、手術が必要になるかもしれないという。

 大統領報道官の否定にもかかわらず、ダビドフ氏は病状が深刻な根拠として、11月4日の「国民統合の日」の式典の模様を取り上げている。1612年10月、ポーランド軍を国民軍がモスクワから追放したのを記念してプーチン氏自らが制定した記念日で、例年大統領がモスクワ南東部のニジニ・ノブゴロドで行われる献花式に出席している。だが、今年は急きょ、会場がモスクワの赤の広場に変更され、大統領が献花するシーンがテレビニュースで短時間放映された。プーチン大統領は小股で足を引きずって歩き、しかもいつもより大きなコートを着ていた。コルセットを付けているのを隠すためではないかとみられている。大統領の健康問題は、ロシアのネット世界で最大の話題となり、ツイッターで多くの人がつぶやいているが、誰もクレムリンの否定談話を信じていないという。反プーチン運動の指導者の一人、ドブロホトフ氏は「プーチンがくしゃみをしただけで、国中が騒いで楽しんでいる」とつぶやいた。

 記事の最後でダビドフ氏は「プーチン氏の本当の健康状態は未だにわからないが、クレムリンはこの情報時代に秘密を守ろうと躍起になっている。だが、メドベージェフ首相がクレムリンに戻ってきたら全てがはっきりする」と書き、大統領に万一の事態が起き、首相が代行する可能性も示唆している。大統領選直前に北方領土問題の解決に強い意欲を示したプーチン大統領だけに、日本側は大統領の長期安定政権を望んでいるが、エリツィン初代大統領が同様に領土問題解決を口にしながら健康悪化により道半ばで終わったことが脳裏をよぎる。野田首相が衆院を解散したことで、来年1月に予想される日露首脳会談に日本側から誰が出席するかはわからないが、プーチン大統領がモスクワで日本の首相を元気に迎えてくれることを期待したい。
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