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2006-09-16 07:00

連載投稿(1)中国との宣伝戦に負けた日本

田島 高志  東洋英和女学院大学大学院客員教授
 日本が国連安保理の常任理事国に立候補したとき、中国は世界中に日本を批判し日本の立候補に反対するキャンペーンを繰り広げた。そのため、日本としては、これまでODAの大半を供与して友好協力関係を築いて来たと思っていた殆どのアジア諸国からも、日本を支持する共同提案国を確保できなかった。これは何を意味するか。日本は、中国の宣伝戦に負けたということなのである。

 中国人は、元々対外宣伝が巧みであり常套手段でもある。夫婦喧嘩の際も、家の中で喧嘩相手の夫または妻を直接なじるばかりでなく、家の前の道に出て来て、隣り近所に向かって自分の夫または妻が如何に理不尽で不正義で許せないかを大声でまくし立てて皆に訴える。第二次大戦後、国民党政府が共産党に負けて台湾に逃げた際、米国には共産中国を認めるべきであるとの意見もあったが、蒋介石夫人の宋美齢が自ら米国に飛び、米国政府や議会をはじめ米国各地で有識者や大衆を相手に、如何に国民党政府が正義で中国共産党が不正義であるか、国民党政府を支援することが如何に米国の利益であるかを演説し、必死に訴えてまわった結果、米国政府は国民党政府擁護を決定することになったことは有名である。中国共産党は、元来宣伝活動を最も基本的な政治活動と見做して重視して来た伝統があるので、共産党政権である現在の中国は、なおさら内外への宣伝活動を重視し、極めて大きな努力を注ぐのは自然の勢いとみるべきであろう。

 日本人はこれに比し、他人の悪口は勿論自己宣伝も品格のない卑しい行為として評価しない伝統的な国民性を持っており、それが現代にも尾を引いて個人の宣伝のみならず自国の宣伝にも腰が引けて中途半端に終わっている傾向がある。民間企業の間では生存を賭けた競争が激しいので、当然自社の宣伝にはそれぞれ相当な経費を使い、研究を行い効果的な宣伝を行なっている。しかし、国の宣伝となるとその効果は会社の売上げと違い数字で出てこないこともあるためか余り重視されず、予算の配分も不十分であり、その方法についての研究も不十分である感を免れない。

 例えば、海外に行って気づくことは、中国の海外向けテレビ放送は、中国が如何に国家建設に努力し、経済発展に成果を挙げているか、国際的にも如何に途上国援助を行い、国際会議やその他の場で国際貢献を行っているかを紹介している。他方、NHKの海外向けテレビ放送を見ると、「お料理教室」、「お母さんと一緒」などたわいのない、外国で視聴するには無意味な番組が多い。もっと外国から評価され、信頼され、感心され、日本についての新しい発見、より深い理解を得られたと喜ばれるような番組が放送できないものかと思う。(つづく)
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