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2013-01-24 00:32

(連載)フランス軍の介入でマリ情勢は好転するか(1)

六辻 彰二  横浜市立大学講師
 1月12日、フランスのオランド大統領は、マリのディオンクンダ・トラオレ暫定大統領との合意に基づき、同国の北部を支配するトゥアレグ人の武装組織であるアザワド民族解放運動(MNLA)と、イスラーム過激派アンサル・ディーンに対する攻撃のため、フランス軍を投入したことを発表しました。13日には、フランス軍の支援を受けたマリ軍と武装勢力間の衝突が発生し、前者は北部主要都市ガオなどを制圧しました。翌14日には、国連の安全保障理事会で、満場一致でフランスの行動が支持されており、今後は地上部隊を含めて2500人規模の部隊に増員されるほか、近隣の西アフリカ諸国で構成される西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)も3300人の兵員を派遣するとみられています。

 西アフリカのマリでは2011年末からMNLAとアンサル・ディーンによる武装活動が活発化し、これの鎮圧にあたっていた軍隊が、装備の不足に対する不満から翌2012年3月にクーデタを起こしました。その後、トゥーレ前大統領が辞任し、トラオレ暫定大統領が就任するなど、マリ中央が混乱している間に、北部では5月にMNLAとアンサル・ディーンがアザワド共和国の樹立を宣言しました。この地域ではその後、ヴェールを着用しない女性が連行されるなど、厳格なイスラーム支配が敷かれていました。

 その当時には、資源が豊富に発見されているわけでなく、大国からみて戦略上さほど地理的に重要な立地でもないマリの紛争である以上、このまま見捨てられる可能性すらあるとの見解を示しましたが、フランス軍の武力介入が実現したことに鑑みると、この予測は外れたようです。それでは、シリアの場合などと比べて、マリへの武力介入が比較的スムーズに進行したのは、なぜでしょうか。

 改めて考えてみると、今回の武力介入が進んだ背景としては、第一に政府の立場がありました。シリアの場合は、あくまで外部の介入を拒絶していますが、マリの場合はむしろ逆に、北部の動乱に手を焼いた政府と軍部が、歴史的に関係の深いフランスに支援を求めたという構図になっています。外国の軍隊が国内に入ってくること、さらに軍事活動を行うことを認めるか否かは、それぞれの国家の主権に関わる問題です。逆を言えば、当該国政府が承認さえすれば、それは容易です。(つづく)
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