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2013-01-25 18:44

(連載)「日中対話」に参加して(1)

池尾 愛子  早稲田大学教授
 私も、1月24日のグローバル・フォーラム等共催の『日中対話:未来志向の日中関係の構築に向けて』に参加した。報告者たちは事前に何度か会合を開かれるなどよく準備をされていて、本欄に要約するのが困難なほどの内容が盛りこまれていたので、報告書は両セッションを通してぜひ読んでいただきたい。コメント・質問が1回はできても、それ以上はフロアから発言する時間的余裕がなかったので、私の質問についての補足と感想だけ書かせていただきたい。セッションは2つに分かれていたが、主催者、報告者、フロア出席者、全員がかなり神経質になっていたと見受けられた。

 セッション1「日中環境・エネルギー協力の新たな展望」では、シンガポールのテレビ放送の取材クルーが入っていた。セッション終了後には、伊藤憲一・グローバル・フォーラム執行世話人がカメラに向かってコメントを述べられていたようなので、中国の深刻な環境問題についての報告と、日中協力をめぐる議論の様子が伝えられたことであろう。22、23日あたりに北京市街地の大気汚染が深刻さを増している状況が報道されていたので、同セッションは時宜を得たものになった。

 ただセッション2において、中国の理系研究者の力量が上昇し、人数も増加していることが伝えられたので、廃棄物処理などの環境対策にもその才能・力量が活用されるようにするべきではないかと感じられた。環境対策の装置を生産過程に組み込めば、GDPが上昇する点は悪くないのではないかと思われる。輸出競争力を高めるためにと、排ガスや排水、廃棄物の処理に費用をかけなければ、中国の人々の生活の質が低いままになってしまう。何のための理系力なのか、という疑問が湧いた。エネルギー問題では、12月にシェールガスに関する米中研究会議が北京で開催されたことも関心を引いた。

 セッション2「非伝統的安全保障における日中協力の新たな展望」では、若者たちにとっても重要な関心事になっている事柄が詰め込まれていた。彼らから断片的な話を聞かされたり質問を受けたりしていたのだが、セッション全体を通して聴くことによって、彼らが議論していた状況や混乱理由がよくわかってきた。本セッションから、次のことが確認された。中国では、「9月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の際、会議の合間、胡錦濤主席が野田首相とすれ違うか何かしたときに、『尖閣諸島を国有化しないでほしい』と言ったにもかかわらず、その2日後に、日本は同諸島を国有化して同主席の面子をつぶしたので、同諸島周辺に海洋巡視船を頻繁に送っている」と毎日のように報道されている。それに対して日本では、「中国が尖閣諸島国有化に反撥して尖閣諸島周辺に中国海洋巡視船が頻繁に来ている」とのみ毎日のように報道されている。また、胡主席がAPECの際に野田首相に伝えたということをプレスリリースしたわけではないことも知られてきている。(つづく)
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