国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2013-07-22 11:23

プーチン大統領の支持率増加傾向を問う

飯島 一孝  ジャーナリスト
 プーチン大統領が復帰してから1年2カ月たち、大統領の支持率は下げ止まり、モスクワなどで増加傾向にあるとの分析結果がロシアの有力シンクタンクから公表された。その一方では、プーチン政権は窮地に陥りつつあるとの見方も出ている。真実はどちらにあるのだろうか?12日付けの露コメルサント紙(電子版)によると、この分析結果を公表したシンクタンクは「戦略発展センター」(ミハイル・ドミトリエフ所長)。11年春、プーチン政権の支持が落ち込み、早ければ同年暮れの下院選挙時に危機的状況になると正確に予測した唯一つのシンクタンクである。

 ところが、同センターが最近10ヶ月の支持傾向を分析した結果、プーチン氏が2期目の大統領とその後首相を務めた06~10年当時の安定した状況に似てきたという。特に専門家を驚かせたのは、3期目の大統領選前にプーチン氏と与党「統一ロシア」の支持率低下が著しかったモスクワで、他の地域より5~10ポイント上昇したとされる。その一方、モスクワっ子の84%がプーチン政権の将来に不安を感じていることがわかった。だが、モスクワで不正選挙が起きた場合、抗議行動をする意向があるかどうか聞いたところ、あると答えた人は25%にとどまった。サンクトペテルブルクでも12%だったが、人口百万人以下の地域では抗議行動に参加する意向があると答えた人が20~30%と高率だった。

 この結果について専門家は「抗議行動への参加の有無などについて感情的に答える人が少なくない。だが、抗議行動をするつもりだと答えた人が、必ずそうするとは限らない。その点から見て、モスクワっ子はかなり理性的に答えている」と話している。同センターでは、プーチン政権の支持率が増加傾向になりつつあるのは、国家を守る能力があり、他に代わるべき人がいない強力な指導者、つまりプーチン大統領のカリスマ性のお陰としている。ただし、この傾向がどの程度続くかについては予想できないとし、強力な指導者が社会に吹き込む愛国主義次第とみている。

 これに対し、ワシントン在住の国際関係学者ゴードン・ハーン氏はモスコー・タイムズ紙への寄稿文の中で、大統領復帰後のプーチン氏は「不十分な経済自由化と権威主義の強化により、ロシアを衰退の危険な道へ導きつつある」と分析。「今後大統領が取るべき道は自らの政治的死か、厳しい政治的弾圧かのどちらかしかない」と指摘している。プーチン大統領が復帰から2年目に入り、反プーチン運動が下火になったことから、プーチン政権が安定しつつあるという見方も成り立つ。だが、それは強権によって反体制派を押さえ込んでいるにすぎず、いつマグマが爆発するか予断を許さない面がある。モスクワ市長選などの地方選挙が行われる秋の陣で何らかの兆候が表れるだろう。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム