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2013-09-20 06:19

小沢、統一会派で「護憲の核」目指す

杉浦 正章  政治評論家
 「盛者必衰」の表現がぴったりの生活の党代表・小沢一郎が、「孤城落日」の社民党と参院で院内統一会派を作る動きに出た。統一会派と言っても、せいぜい7人程度のスタートとなりそうで、目的は予算委員会での質問権確保にある。小沢はこれを核にして、あわよくば護憲勢力の結集に動こうとしているようだが、肝心の民主党は小沢アレルギーが強く、乗りそうもない。野党全体が、総選挙と参院選で2度の脳しんとうを起こして、まだ立ち直れない状況であるのだ。中国四川省のことわざに「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫だ」があり、鄧小平もかってこれを使った。これを翻案して、かつての民社党初代委員長・西尾末広が「政権を取らない政党は鼠を捕らない猫と同じだ」と述べた話は有名だ。しかし政界にはいまその鼠を捕らない猫ばかりがうようよしている。それも怠惰で寝てばかりいる。

 さすがに、政党を作っては壊してきた小沢も今度ばかりは参ったようだ。辛うじて維持している生活は衆院7人、参院2人でこれまでに作った政党では最小。参院選は当選者ゼロ、岩手の小沢王国は完膚なきまで食いちぎられた。8人いた小沢系国会議員は今や3人まで減少してしまった。凋落すると水商売がしたくなるのか、焼き肉屋に転向した小沢チルドレンがいるかと思えば、社民党前党首の福島瑞穂はバーのマダムだ。終戦の日の8月15日の夜、東京都杉並区内の居酒屋で一日マダムとなって「平和憲法を語る会」を開いた。小沢は既に71歳。72歳で首相になった福田赳夫の例はあるが、周りの状況はまさに「出口なし」である。漏れうかがうその心境は、強さと弱さが交叉している。「このままでは死にきれない」と意気込むかと思えば、「沖縄で釣り三昧もいい」と新築の別荘に引退するかのような口ぶりもみせる。総じて勢いがないのだ。その勢いのない中で打った布石が、社民党との院内会派だ。

 水面下で小沢は社民党党首代行・又市征治に働きかけるとともに、民主党では腹心の副議長・輿石東を通じた再編を狙った。護憲勢力を中心とするリベラル派の糾合である。社民党は参院選大敗で福島が党首を辞任、このままでは解党となりかねない危機にさらされている。大先輩である元首相・村山富市までが解党論を唱えるに至っている。村山の構想は解党を視野に入れた政界の再編だ。「社民党はこのままいっても先がない。党派にこだわらず、憲法を守らないといかんという者は結集すべきだ。社民党が火付け役になって新しい党を作り上げていくことも大事だ」というのである。この護憲勢力結集構想は「死にきれない」小沢の思いとも合致して、院内会派結成に至ったものだ。しかし護憲勢力の結集は、ミニ政党が集まっても“ごまめの歯ぎしり”にしかならない。せいぜい民主党の一部でも参加しなくては意味がない。そこで小沢は輿石を動かそうとしているのだ。輿石は護憲での結集には前向きだが、副議長に祭り上げられては動きもままならない。

 民主党内の情勢は、元首相・野田佳彦が「蟄居(ちっきょ)」の状態から抜け出しそうな気配がある。元外相・前原誠司も維新共同代表・橋下徹と気脈を通じている。輿石が下手に左派を動かそうとすれば、右派も維新やみんなの党と再編へと動きかねない情勢がある。とりわけ首相・安倍晋三が憲法改正や集団的自衛権で投げている直球が、民主党内に今後遠心力を働かせる可能性も強い。さらなる分裂を招きかねないのだ。「御輿は軽くてパーがいい」とばかりに、小沢の入れ知恵で輿石が担いだ海江田万里では、荷が重すぎてとてもまとめきれない状況になり得る。こうした状況を察知してか、民主党幹事長・大畠章宏も小沢の仕掛けによる院内統一会派には極めて慎重である。ただ、小沢と村山が掲げる「護憲新党」は、安倍政権の出方や、マスコミの論調によっては、大きな動きに発展する可能性も否定出来ない。そのアリの一穴になるかどうかが、生活と社民の院内会派だとすれば、あながち馬鹿にしたものでもない事は確かだ。小沢が定期的に開いている「小沢一郎政治塾」が9月19日スタートした。小沢は22日に講演する予定だが、おそらく護憲勢力の結集を主張するのだろう。 
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