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2013-10-17 11:00

日本はロシアと、どうしたら親しくなれるのか?

飯島 一孝  ジャーナリスト
 学者とジャーナリストの有志で構成する「日露学術報道専門家会議」の一員として9月中旬、モスクワを訪れ、ロシアの識者らと意見を交換した。話題の中心は、やはり日露関係は今後どうなるか、だった。古くて新しいテーマだが、お互いにもっと親しくなりたいと思いながら親しくなれない現状を打開したいという気持ちには変わりなかった。我々が会ったロシア人は多士済々だが、どちらかというと親日派と呼ばれる人が多かった。ジャーナリストでモスクワ国際関係大学上級研究員のアンドレイ・イワノフ氏もその一人だが、ロシア人の対日観をある意味で代弁していて興味深かった。

 イワノフ氏によると、ロシア社会で日本のイメージは肯定的に受け止められている。そのイメージは、ソ連時代に共産党機関紙「プラウダ」東京特派員だったオフチンニコフ氏らによって作られた。同氏が書いた単行本「一枝の桜――日本人とはなにか」(読売新聞社刊)は1971年にモスクワで出版されると、たちまちベストセラーになった。この本を手にとって読んでみると、社会主義の盟主と言われたソ連の、しかも党機関紙の記者が書いたものとはとても思えない内容だ。まさしく等身大の日本人の発想や考え方が描かれていて、日本人が今読んでもなるほどと納得させられる本である。イワノフ氏は、ソ連が崩壊し、ロシアが日本と同じ資本主義国になってからも、日本に興味を持っている人は少なくないという。その後、日本の企業がどんどんロシアに進出してきて、リーマン・ショックがあっても日露貿易が発展したことから、ロシア人の間に「(領土問題を解決して)平和条約を結ばなくても、経済協力は発展する」というイメージが生まれているという。

 北方領土解決のスローガンはこれまで「どちらも勝者でも敗者でもない形で解決しよう」というものだったが、今は「引分け」という表現に変わってきた。そこでイワノフ氏は「引分けに向かうためには(人口が多い米中の脅威に対して)人口が少ないロシアと日本が互いに協力すべきだ」と、日露間の協力を強化するよう提案した。最近のロシア事情を聞くと、村上春樹氏の小説はもちろん、日本のアニメ、さらには漫画も人気で、静かな日本ブームが起きているという。モスクワでは寿司やうどんの店も増えており、日本への関心はソ連時代と比べると雲泥の差らしい。当然、日本への親近感も増しているとみられる。

 一方、日本はというと旧ソ連から続く「ロシア嫌い」は依然として変わっていない。毎年行われている内閣府の「外交に関する世論調査」(昨年10月実施)によると、「親しみを感じる」と答えた人は19.5%と低く、同じく領土問題を抱える韓国(39.2%)と比べても半分以下だ。ロシアに「親しみを感じない」は76.5%と高率で、こうした傾向は調査を開始した1980年以降ほとんど変わっていない。これに対応するロシア側の調査はないが、親近感では明らかに「露高・日低」だろう。日本人の「ロシア嫌い」が根底で領土問題の解決を阻んでいる気がしてならない。日本人の意識を変えるにはどうしたらいいのか。北方領土解決に日本政府が本腰を入れて取り組むなら、まずこの問題を解決する必要がある。
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