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2013-10-17 20:13

論理逆転している飯島一孝氏の対ロ観

岡田 章一  元会社役員
 10月17日付け本欄に投稿された飯島一孝氏の「日本はロシアと、どうしたら親しくなれるのか?」を読んで、その逆転した論理に仰天した。最近訪露してロシア人の対日観にふれ、その親日ぶりに驚いたというような内容だが、ロシア人の間に「(領土問題を解決して)平和条約を結ばなくても、経済協力は発展する」というイメージが生まれていると、それをあたかも望ましいことであるかのように紹介しているのは、いただけない。飯島氏は、さらに筆を進めて、その投稿をつぎの一文で締めくくっている。

 一方、日本はというと旧ソ連から続く「ロシア嫌い」は依然として変わっていない。毎年行われている内閣府の「外交に関する世論調査」(昨年10月実施)によると、「親しみを感じる」と答えた人は19.5%と低く、同じく領土問題を抱える韓国(39.2%)と比べても半分以下だ。ロシアに「親しみを感じない」は76.5%と高率で、こうした傾向は調査を開始した1980年以降ほとんど変わっていない。これに対応するロシア側の調査はないが、親近感では明らかに「露高・日低」だろう。日本人の「ロシア嫌い」が根底で領土問題の解決を阻んでいる気がしてならない。日本人の意識を変えるにはどうしたらいいのか。北方領土解決に日本政府が本腰を入れて取り組むなら、まずこの問題を解決する必要がある。

 「この問題を解決する必要がある」とは、どういうつもりでの発言なのであろうか。日ロ関係の理解に根本的な間違いがあると言わざるを得ない。日本人の「ロシア嫌い」の根底には、ロシア人の日本人に対する暴力による背信と不正義がある。ヒロシマに原爆を投下され、日本民族がその歴史上最悪の危機(いわば瀕死の重傷)にあったときに、日ソ中立条約の信義を破って背後から日本を刺したのが、ロシアであった。対日参戦と、60万人日本人のシベリア連行、そして樺太、千島、北方4島の占領が、ロシア人のやったことである。これは民族と民族の歴史として永遠に日本民族の記憶に残る事実だ。しかるに、ロシア人はこれらの行為についていまだに一言の謝罪も述べることなく、むしろ開き直って既成事実化を図っている。飯島氏の言うべきであった言葉は、「領土問題の未解決が根底で日本人の『ロシア嫌い』の改善を阻んでいる。日本人の『ロシア嫌い』を解決するためにはどうしたらいいのか。ロシア政府が本腰を入れて北方領土問題の解決に取り組む必要がある」という言葉ではなかったのか。

 飯島氏の間違いの原点は、対ロ友好が自己目的化して、そのためには「相手の言い分を全部聴けばよい」という安易な結論になっていることだ。一般論だが、日本人の外交論には、ロシア以外の国との関係でも、同じような議論を平気で述べるひとが結構多い。相手と仲良くなること自体が目的だから、「相手の言うとおりにすれば、それでよいではないか」ということになるようだ。相手の主張する「正義」に屈服して、「奴隷の平和」を手に入れる結果となることに気付いていない。
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