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2013-10-22 17:46

(連載)参院選勝っても靖国参拝できぬ首相(1)

酒井 信彦  元東京大学教授
 終戦記念日の8月15日、安倍首相は結局靖国神社に参拝しなかった。参院選に勝つまではと、各種の勇ましい公約を封印してきた首相であるが、参院選に勝っても靖国参拝は実現できなかったのである。このことの持つ意味は重大である。そのためか却ってそれに対する反応はとても低調で、皆で黙り込んでいる状態であるようだ。

 中国や韓国との外交関係は、これ以上悪くなりようがないくらい悪いのであるから、両国の思惑を考慮することなく、参拝するのには絶好の機会であったと考えられる。では安倍首相はなぜ靖国参拝をしなかったのか。その理由は、参拝推進派の産経新聞の8月14日付け報道によれば、アメリカの意向に沿って行けなかったとのことである。当時来日していた上院外交委員長は、安倍首相の決断を賞賛した。

 今からちょうど7年前、2006年に当時の小泉首相は8月15日に靖国参拝をおこなった。その後継者と考えられた安倍首相は、2007年の訪米に当たって、議会での慰安婦問題の決議をぶつけられ、靖国参拝はできなかった。すでにこの時から、歴史問題に関するアメリカの対日牽制は始まっており、それ以来首相の靖国参拝はできずにきた。そして今年こそはとの期待もあったが実現できなかったわけである。郵政民営化を行った小泉首相は、終戦記念日の靖国参拝ができたが、安倍首相はTPP交渉への参加を決断しても、靖国参拝を実現できなかったのである。

 5月から6月にかけて、アメリカ・中国・韓国は、それぞれ相互の首脳会談を行ったが、ここで日本をめぐる歴史問題・領土が取り上げられた。特に米韓会談の際には、朴大統領に上下両院合同会議で演説の機会を与えた。そこで同大統領は日本批判を展開して、満場の拍手を浴びた。米議会調査局は安倍首相を強固なナショナリストとしたが、ここにアメリカの意向が明瞭に表れている。(つづく)

 
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