国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2013-10-23 10:53

(連載)参院選勝っても靖国参拝できぬ首相(2)

酒井 信彦  元東京大学教授
 すなわち、今年の夏靖国問題などの歴史問題の解決が極めて困難になった事実はまことに残念ではあるが、正面から受け止めなければならない。さらに客観的状況も7年前よりはるかに悪くなっている。当時より中国の経済力・軍事力は成長し、アメリカの力は落ちている。しかも中国は日本の領土に対する、あからさまな侵略意欲を表明した。そうなれば軍事力無き日本は、アメリカに頼らざるを得ず、歴史問題においてもアメリカの意向に逆らうことは難しい。この困難な状況を突破するには、極めて巧妙な外交テクニックが必要であるが、それは今の日本人にとって最も欠けているものである。

 要するに歴史問題の根本的な解決、日本の真の回復には、日本の軍事的自立が必要なのである。ただし日本の現状では、これはとても望むべくもない課題である。空想的平和主義を唱える勢力は我が国においては極めて根強く、自民党にすら存在する。憲法改正に唯一の望みを託する人は多いが、憲法さえ変えれば日本は魔法のように立ち直るとは、私にはとても考えられない。そしてそもそも、アメリカが制定した「米定憲法」の改正を、アメリカは黙って認めるのであろうか。

 10月2日の産経新聞の国際面雑報欄に、ソウル発時事電によって、「在韓米軍当局者『日本の改憲は無益』なる見出しの記事が出ている。それによると「在韓米軍当局者は1日、安倍晋三政権が目指している憲法9条改正について、『地域にとって無益だ』と批判した。ソウル市内で一部記者団に語った。中韓両国との関係によい影響を与えないとの認識に基づく発言で、米軍当局者が日本の憲法問題に明確な立場を示すのは異例だ。当局者は、『過去数カ月間、安倍首相が語ってきたことを(報道などで)全て読んだが、率直に言って地域にとって無益だ』と指摘。具体的には『憲法の変更をめぐる議論』を問題視した」とある。(以上、全文)

 同日の朝日新聞にも、同趣旨の小さな記事が出ているが、こちらには米国防省報道官のコメントが出ている。それによれば、「この発言を受けて、米国防総省のリトル報道官は『米国は日米韓協力の拡大を期待している。歴史的な緊張はあるが、民主主義など共通するつながりに基づく未来があることも認識している』との談話を発表した」。国防総省としては、在韓米軍高官の発言を、積極的に否定してはいないようだ。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム