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2013-10-28 06:59

秘密法案で“風評”源と化した朝日新聞

杉浦 正章  政治評論家
 朝日の「天声人語」を見て、ここまでやるかと“驚がく”した。あらぬ方向から特定秘密保護法案を切り裂いている。その内容は感情的で、唯我独尊。原発再稼働反対で国政選挙でのキャンペーンに敗れ、追い詰められた朝日が、最後に牙をむいて、安倍政権に襲いかかる姿を如実に象徴している。朝日はいまや共産党にも類似して、安倍政権にことごとく反対する姿勢を鮮明にしており、明らかに不偏不党の同紙の綱領をかなぐり捨てての、対決姿勢だ。方向性はともかく、事実関係の正確さにおいては定評のあったいわゆる「高級紙・朝日」が、体面も何もかなぐり捨てて、タブロイド紙並みの“風評”をまき散らす姿にりつ然とせざるを得ない。今日から国家安全保障会議(NSC)創設法案の実質的な審議入りをするが、政府は徹底した反論を加えるべきである。「風評紙」に成り下がった朝日の姿は、10月26日付朝刊にすべて現れている。まず伝統ある「天声人語」の破滅的な論調だ。なんと秘密法案について「米国からもらった情報を守るために自国民を罪に問う法である。民主主義を揺さぶりかねない法でもある」と断定したのだ。「天声人語」の筆者に問いたい。仮にもジャーナリストなら、米国からの情報がいかに貴重であるかを知っているはずだ。あえて無視しているのか。情報がないとどうなるかだ。

 去る1月に日本人7人の死者を出したアルジェリアのテロ事件を考えてみよう。日米外交筋によると、米国はかなり詳細なテロリストの情報を事前に掌握していたが、日本に流すと漏れることを理由に伝達を断念したというのだ。朝日とてこの情報がないわけではあるまい。それを無視して「米国情報を守るために日本国民を罪に問う」などと論理の飛躍をして、恥ずかしくないのだろうか。筆者は「天声人語」を愛読してきたが、これまでこれほど破たんした論理を展開したケースを知らない。あえて大衆が取っつきやすいキャッチフレーズで“風評”を巻き起こそうとしているのだ。「天声人語」はさらに続けて、「出来てしまったあとで破滅的な結末を招いた、戦前の幾つかの法を忘れたくはない。『はじめにおわりがある』。抵抗するなら最初に抵抗せよ。朝日新聞の大先輩にして反骨のジャーナリスト、むのたけじ氏の言葉が点滅する」と述べた。これは扇動である。一般市民や、反戦運動家らを勢いづけるためのプロパガンダ的な色彩を濃厚にしている。「天声人語」の筆者は、朝日内でも一目置かれ、その“方針”は社説と共に現場記者の取材活動に大きな影響を与えている。まさに安倍政権に対して、社説「特定秘密保護、この法案に反対する」とともに社内的にも宣戦布告のラッパを鳴らしたものに他ならない。ちなみに全国紙の社説は読売、産経が基本的に同法案に賛成であり、毎日までが「安全保障上、重要な情報を一定期間、機密として扱うことに反対はしない」と条件付き賛成だ。

 朝日だけが「天声人語」も、社説も、もはやなりふり構わぬ法案つぶしの動きに出たのだ。“風評”の傾向は「天声人語」にとどまらない。10月26日付夕刊の「素粒子」だ。「『お前は秘密を漏らした。逮捕する』。『何の秘密を』『それは秘密だ。私は知らぬ』。秘密保護法のオーウェル的世界。」とやっている。マインドコントロールのジョージ・オーウェルにこじつけて、全体主義への危険があるかのような印象を読者に与えている。同様の傾向が社会面にも如実に反映され、同日付朝刊では「あれもこれも秘密」と題して居酒屋の会話で逮捕される会社員の話を作り上げている。原発に使う世界最高強度の素材製法の一端を友人に話した結果の逮捕だという。その居酒屋には、非番の警察官が近くの席で飲んでいて、ICレコーダーで会話を録音し、捜査していたのだという。一貫して、ある事ない事どころか、ない事ない事を書き並べている。その編集方針の狙いはどこにあるのだろうか。あきらかに物事を信じやすい一般大衆レベルまでプロパガンダを下げて、卑近な例を使って扇動しているのだ。なぜ扇動するのかと言えば、60年の安保闘争並みに国民レベルの大衆運動を巻き起こし、デモで首相官邸や国会を包囲する状況を作り上げようとしているのだ。そして次の国政選挙で安倍政権をひきづり降ろすとっかかりを作るという“深謀遠慮”があるのだろう。27日付のコラム「政々流転」で共産党の“躍進”を大々的に取り上げ、「揺るぎなき反自民」と歯の浮くような礼賛をしているように、まるで何でも反対の共産党と同一歩調の姿勢が鮮明だ。今や朝日にとって他の野党は頼りにならず、共産党だけが頼りの現状を反映しているのだ。秘密法案の国会審議を担当する森雅子が、やってはいけない取材の好例として挙げた西山太吉事件の張本人にインタビューして語らせているのにも驚いた。秘書をたぶらかした取材で最高裁有罪となり、マスコミ人の恥とも言える西山ですら頼りにしたい朝日なのである。

 世論をリードする報道機関がこれだから、テレビがもてはやす評論家に至っては、まさにデタラメ論評が頂点を極めている。目立つのは女性評論家の浜矩子である。あちこちのテレビで空想的平和主義を唱えてはばからない。浜によると「グローバル化時代には国々が秘密をいっぱい持ってはならない。日本が世界各国に声をかけて秘密保護法案を持たないようにすべきだ」なのだそうだ。浜はアベノミクスの破たんを予言し、口を極めて批判したが、一連の発言とは真逆に日本経済はデフレ脱却の兆しを見せ、大間違いとなった。経済評論家は大多数が口から出まかせとみた方がよいが、今度は畑違いの政治の分野で口から出まかせをやっているのだ。秘密を持たない国家がかって歴史上存在したのだろうか。馬鹿馬鹿しくて反論もしたくないが、テロリストや北朝鮮、中国、韓国が手を叩いて喜びそうな“愚論”だ。これで良く「評論家でござい」とメシを食って行ける。何でもはっきり放送局の意向に沿った発言をしてくれる評論家は、TBSやテレビ朝日など民放テレビにとって宝ではあろう。それ故に民放テレビも風評源となっているのだ。あえて法案の内容の正当性を説明しないが、これだけは強調しておこう。太筆で書けば、日本は民主主義国家としての基盤が戦後70年の間に出来ている。マスコミがしっかり監視すれば、ヒトラーが出てくる隙はない。同様の法案をもとにNSCを運営している、米、英、仏に全体主義が台頭したか。ニクソンのウオーターゲート事件を暴いた記者やその情報源が逮捕されたか。中国では国家機密漏洩は死刑だ。そんな国に取り囲まれていて、能天気な論調を唱えているときではない。本質はスパイ天国解消法案なのである。
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