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2014-02-04 06:51

市長選で橋下都構想に弾みは付かぬ

杉浦 正章  政治評論家
 大阪のだだっ子が最後の勝負に出た。議会でいじめられたから「お母ちゃん」とばかりに有権者に抱きつく究極のポピュリズムだ。しかし主要政党が対立候補を擁立しないから、市長・橋下徹は一人相撲を余儀なくされる。勝つのが当たり前で、何のために6億円もの巨費を投じて市長選挙をやるのかということになる。狙いはなにかと言えば、橋下は、来年の統一地方選挙で市議会の橋下チルドレンが大量に落選し、これにつられて自らも“溺死”しかねないことを恐れているのだ。つまりは大阪都構想実現を背景に選挙大敗を食い止めようとしているのだ。そこには全く「大義」など感じられず、選挙の私物化そのものしかない。溺れる者がつかむわらが都構想なのだ。中央政界もこの橋下独走には総スカンの様相だ。橋下の描く図式は、市長選の勝利をテコに、議会を動かして都構想実現のための住民投票決定に持ち込む。秋に住民投票を実施して、これに勝ち、来年春に「大阪都」を実現する。その波に乗って統一地方選挙で大勝するというものだ。しかし、この判断には最初から大誤算が伴っている。

 その第1が議会を動かすには、維新以外の主要政党が候補を立てて戦いに応じ、これに圧勝して弾みを作り出さなければならない。ところが自民、民主、公明、共産など主要政党はその見え透いた戦術には乗らない方針だ。候補者を立てずに、一人で踊らそうという作戦だ。これを知って真っ青になった橋下は「他党も候補者を立てるべきだと」主張したが、これに応じる主要政党は出てきそうもない。この結果橋下は対立候補のいない選挙を余儀なくされることになる。事実上一人で戦うことが何を意味するかといえば、政治的にはぬかにくぎを意味する。やらなくても同じということだ。むしろやらない方がましだということだ。さらに対立候補が出ないということは、選挙が盛りあがらないことを意味する。その結果投票率は極単に低くなる可能性がある。その低い投票率で支えられて当選しても、市議会への影響が現在以上に高まることはあるまい。ただでさえ維新以外の各党は、橋下の突出に総スカンの様相だ。自民党幹事長・石破茂が「今、市長選を実施する必然性がどこにあるのか。理解しかねる」と突っぱねれば、民主党代表・海江田万里も「新しいことを言い出したわけじゃないのに、どうして辞任なのか」と批判。公明党代表・山口那津男は「大義名分がない」とまで言い切った。唯一助け船のような発言をしているのが盟友の官房長官・菅義偉だが、内心は困っているのだろう。

 橋本にしてみれば、公明党は“裏切り”と映っているに違いない。先の総選挙で都構想推進を約束して公明候補を応援したにもかかわらず、山口に「住民投票まで協力すると約束していない」と言われて、全てが行き詰まったからだ。もちろん市議会も同様の反発が生じており、一人相撲して当選してきても、都構想推進に回る政党はまず出現しない。だいいち橋下が再選しても市議会の構成は変化しないのだ。当選してきた橋下は、ゼロから議会工作をしなければならず、市長選は議会との関係を一層こじらせるだけの効果しかもたらさないことに直面するだろう。自分ではまだ5割くらいはある支持率をテコに、市長信任投票をカンフル注射と位置づけて、統一地方選への展望を開く戦術なのだが、誰がどう見ても悪あがきとしか映らない。昨年の慰安婦発言で、国際的な反発を招いて馬脚を現した橋下の落ち目は、9月の堺市長選挙敗北で決定的となった。いまや政党支持率は1%以下だ。このままいけば市議会の維新は1年生議員が多く、中央政界と同じように風で当選したチルドレンは、一期で去る運命だ。

 食い止めようと焦れば焦るほど、溺れる橋下は深みにはまってゆくのだ。維新幹部は、他人事のように「橋下君はまぐろで、泳ぎ続けなければ死ぬ」と述べているというが、その実態を明快に解説している。橋下の手法は、同じように都知事選で単一争点の劇場型選挙を狙う「細川・小泉ライン」と似ているが、もう有権者は利口になって劇場型選挙に踊らされにくくなっていることを知るべきだ。中央政界への影響はほとんどないが、橋下の存在を利用して野党再編を狙う向きには打撃となる。ゆいの党の代表・江田憲司は、橋下ルートだけが頼りであったが、そのずっこけが目に見えていては、弾みが付くどころではない。みんなの党代表・渡辺喜美は「維新には遠心力が働く」と予言したが、もう橋下に政界再編の力は残らないだろう。民主党の前原誠司も橋下との強い結びつきを活用しようとしてきたが、これで五里霧中となる。首相・安倍晋三と橋下の関係も密であるが、「責任政党」との連携路線は国会議員団幹事長・松野頼久や共同代表・石原慎太郎との関係で維持されてゆくものとみられる。
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