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2014-02-14 10:26

(連載2)TPPでの防御ツール

緒方 林太郎  前衆議院議員
 理屈として正しいのですから、これはどんどんやればいいと思います。ただし、難しいところが2点ほどあります。1つ目は、日本の国内補助金や支持政策に波及しないかということです。アメリカから、「そんなこと言うのなら、国内補助金だって貿易を歪曲しているではないか。日本の農業補助金もどうにかしろ。」と反撃が来る可能性があります。これも論理的には正しいです。だから、WTOで農業交渉をやる時は、市場アクセス(関税等)、国内支持(国内の補助金や支持政策)、輸出補助金の3枠立てで交渉するのです。ただ、交渉の雰囲気として、そこまで行く事はないでしょう。日本の国内補助金や支持政策はあくまでも外に攻め出していく要素はありません。輸出補助金は、輸出価格を圧縮してから他国に攻め込んでいくツールですから、その筋の悪さは比ではありません。

 2つ目は、アメリカからすると「輸出信用は別にTPP諸国のみに向けられたものではなく、貿易全体に関するもの。EUが輸出補助金を残している中、うちだけ止めろというのはおかしい。」という気持ちになっているでしょう。EUは輸出補助金をかなり削減してきていますが、特に家禽モノについては相当にフランス農家あたりが撤廃に反対をしています。昔から書いていますが、この部分がWTOみたいな世界の大多数の国が入っている交渉と、TPPみたいな限られた国による交渉の違いでして、補助金政策というのは世界全体に波及するので、一部の国だけで交渉する時に削減、撤廃をコミットしにくいのです。

 多分、実務上、TPP関係国への輸出分にだけ、輸出補助金的効果のある輸出信用はやらないというふうには出来ないのだと思います。そこまで細かく仕分けした上で、信用を付ける、付けないとやっていると行政実務も現場も大混乱するでしょう。しかも、アメリカ政府は議会との関係で、おいそれと輸出信用に手を付けることが出来るとも思えません。そんなことをしたら、政権が瓦解します。

 ただ、それでも正論は正論として言い続けるべきです。アメリカ側の事情を考慮する必要は一切ありません。「EUが輸出補助金を残しているから、アメリカもやれない。」、そんなことは日本には関係ありません。「おたくが補助金効果のある輸出信用をやっている内は、うちも関税撤廃などコミット出来るわけないではないか。」という理屈に説得力ある返事が来ることはないでしょう。そんなものです、国際貿易交渉とは。どんどんやっていくべきです。(おわり)
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