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2014-02-19 10:29

ソチ五輪の影で日中がロシアを取り込む外交戦を展開

飯島 一孝  ジャーナリスト
 ロシア・ソチの冬季五輪開会式(7日)に出席した日中首脳が、ロシアの取り込みを狙って舞台裏で激しい外交戦を展開していた実態が浮かび上がった。欧米の主要国首脳が軒並み欠席する中で、中国は早くから出席を公表、プーチン大統領と会談し歴史問題で得点した。一方の安倍首相は開会式直前に到着、翌日の会談で大統領の訪日を確認、巻き返した形だ。先にソチ入りした中国の習近平国家主席は6日、プーチン大統領と会談。両首脳は年内に5回会談し、このうち大統領が2回訪中することで合意した。安倍首相が昨年4回、大統領と会談したことから、それを上回ろうという中国側の思惑が見えてくる。さらに、中国国営の新華社通信によると、プーチン大統領は会談で「日本の軍国主義が中国などアジアの人々に対して犯した重大な犯罪を忘れてはならない」と述べたとされる。ところが、ロシア側はこの部分を発表しておらず、日本側に配慮した発言ではないかとの見方が出ている。

 一方、日本側は最初、ソチ五輪の期間中、安倍首相が現地でプーチン大統領と接触する程度でいいと考えていた節がある。それも開会式に出席するのは日程的に無理なので、閉会式に行くことも検討された。その後、急きょ開会式に出席することになり、首脳会談も本格的なものになったのは、中国側の動きに触発されてのことだとみられている。習主席は翌7日には、ソチで潘基文・国連事務総長と会談し、来年第二次大戦70年を迎えることに関し、「正確な歴史観を堅持し、第二次大戦後の秩序を揺るぎなくする必要がある」と述べた。これは歴史問題に絡めて安倍首相を暗に批判した発言と受け取られている。中国側はあらゆる機会をとらえて“日本叩き”をしているようにみえる。

 中国と日本がロシアを取り込む外交戦を展開していることについて、ロシアのある外交関係者は「中国は一生懸命ロシアを巻き込もうとしているが、ロシアにはその気はない」と言い切る。その半面、「中国とは戦略的パートナー関係なので、国連などでの協力は日本とは比較にならない。しかし、日本はG8の重要メンバーであり、重きを置いている」と語り、中国との特別の関係を強調する。そのうえで、この関係者は日本との関係についてこう語る。「ロシアは日本との関係強化に関心がある。無視するつもりはない。それと同時に、第二次大戦の結果は大事である。だが、日本が見直しをしない限り、(歴史問題を)わざと問題にすることはしない」

 要するに、ロシアのスタンスは(1)第二次大戦の結果は重要であり、来年70年の行事を行う予定である(2)大戦の結果は現在の世界の制度につながっているので、全ての国との関係を発展していきたい(3)ロシアとしては、他の国と一緒になって第三国と対立するつもりはない、というのである。つまり、中国と組んで日本に対抗するつもりはないというのだ。とはいえ、中国の方が日本より重要な関係なので、できる限り中国の要請には応えていく方針といえる。日本側はロシアの態度に一喜一憂しがちだが、こうした基本的スタンスを踏まえたうえで、ロシアと接するべきだろう。
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