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2014-03-27 10:24

(連載1)フランスでの極右政党躍進に思う

緒方 林太郎  前衆議院議員
 日本ではさすがに関心を呼びませんが、3月23日にフランスで統一地方選挙が行われました。結果は与党の若干の退潮傾向と極右政党・国民戦線の大躍進です。最初に解説をして、後半は日本との関係で思う事を書いていきます。まず、フランスの統一地方選挙について説明します。とても特徴的なのです。(1)自治体の数がきわめて多い:なんと3万7千弱あります。歴史的な経緯から、自治体の数が多く、その中の大半はとても小さな自治体です。なんと人口1人の自治体(南仏のRochefourchatという町)もあります。多分、私が住んでいる北九州市八幡西区の穴生地域だけで、フランスでは既にまあまあな規模の自治体と言えるくらいです。(2)選挙は二回投票:一回目で過半数に届かなければ、得票率が10%を超えた政党(候補者リスト)が二回目投票に進みます。その間に合従連衡は結構あります。一回目で過半数を取った政党、二回目で多数を取った政党が、市議会の議席の半分をまず取り、残りの半数の議席を得票数で分けて行きます。そして、多数党の候補者リストの名簿順一位の者が市長になります。ちなみに、フランスは兼職規定が緩いので、国会議員と市長を兼任している人はかなりいます。野党第1党UMPの党首であるフランソワ・コペは、モー(Meaux)の市長に第1回投票で当選しました。

 こうした中、今回の一番の衝撃は、北フランスのパ・ド・カレ県にあるエナン・ボーモンという人口約2万6千人の街で、第一回投票で極右政党の国民戦線が過半数を取ったということでした。他のすべての左派、右派、エコロジスト等全部足しても、国民戦線が過半数を取ったというのは衝撃的です。その結果、国民戦線のリスト第一位のスティーヴ・ブリワ氏が市長になります。同じように南仏のオランジュ市でも、(国民戦線とは別の)極右勢力が第一回投票で過半数を取りましたが、ここは昔からガッツリ極右が強いのであまり驚きはありませんでした。しかも、全国的に見ると、あちこちで国民戦線が第二回投票(3月30日予定)に進んでいます。今回、660の自治体でしか候補を立てなかったのに、そのうちの229の自治体で第二回投票に進んでいます。候補を立てたところは、「それなりの規模がある」自治体です(人口100人くらいの小さな自治体で候補を立てるのはコスト・パフォーマンスが悪いのでやっていません。)。つまり、そこそこの規模の229の自治体で得票率が10%を超えたということです。

 その中には日本人でも聞いたことがあるような有名な街があります:ブザンソン、ミュールーズ、アミアン、ルーアン、カレー、ストラスブール、ルマン、ニーム、サン・テティエンヌ、クレルモン・フェラン等です。しかもペルピニャン、アヴィニョンを始めとする20弱の自治体では第一党となりました。恐らく、第二回投票で国民戦線が市長を取る市がもう少し出るでしょう。

 そして、全国的に見ても、万遍なく伸長しているという印象です。得票数は100万票弱で総投票数の5.94%とされていますが、国民戦線が候補を立てたのは、3万7千自治体の内、たったの660です。国民戦線が候補を立てた自治体での得票率は16%を超えますから、大統領選挙のように全国1選挙区だと仮定すると、もしかしたら国民戦線は第二党くらいにはなれそうな勢いです。(つづく)

 
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