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2014-04-17 10:36

財政の抜本改革、やるのは今しかない

鈴木  亘  学習院大学教授
 少子高齢化による社会保障財政の破たん(あるいは、膨大な世代間不公平の発生)という「大災害」は、被害額でいえばどんな震災をも上回る恐るべき破壊力です。社会保障の分だけ考えても、何と1500兆円という恐るべき純債務額を、今の若者世代、これから生まれてくる子供たちに背負わせることになりますので、まさに未曾有の大災害といってもよいでしょう。しかも、震災とは違って、確実にやってきますので、「想定外」という言い訳はできません。また、この災害は100%「人災」であるという特徴があります(自然災害とは違って、被害にあうのは自業自得のなせるワザです)。

 しかし難問は、これがすぐにやってくるものではなく、10年、20年単位の時間をかけてやってくる災害であるということです。今日、明日にやってくる危機ではなく、10年後、20年後にジワジワやってくる話では、なかなか国民の間に危機感が生まれず、したがって政治的な優先順位が上がらないということに、この問題の難しさがあります。しかし、財政危機が訪れてから対策を始めても、もはや手遅れで、座して死を待つより仕方がなくなります。

 本当は、今からすぐに対策を始めるべきですし、景気回復で余裕が生まれた今こそ、社会保障財政の抜本改革に手をつける絶好のタイミングなのですが。また、日銀が現在、事実上の「日銀引き受け」という財政ファイナンスをしている状況では、中長期的な社会保障の抜本改革を今決めないと、近いうちに国債の信任が崩れるリスクが大変高いと思うのですが、現実の政治は全く動きません。

 先日厚生労働省は、6月をめどに行われる公的年金の財政検証に使われる将来の経済前提値を提示しましたが、まったくありえない数字が選ばれています。たとえば、これから100年近い長期間にわたる積立金運用利回りの想定値(基本シナリオ)は「4.2%」と、前回あれほど批判された4.1%を上回る値に、ほぼ決定されてしまいました。どう考えても今の安倍政権の社会保障に対する認識には首をかしげざるをえません。金融政策とは異なり、社会保障問題を正しく判断できるブレーンが政権内にいないのでしょうか。
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