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2014-05-07 10:10

(連載2)憲法記念日 朝日新聞に驚く

中村  仁  元全国紙記者
 朝日に戻りますと、改憲派の桜井よしこ氏の談話を載せ、「現行憲法は憲法を知らないGHQの素人集団が短期間でつくったもので、専門家によるチェックもなかった」との意見を紹介しています。幼稚で極端な意見と知りながら載せて、改憲派の底の浅さを印象づけるのが目的でしょう。朝日出身の石川真澄氏の「戦後政治史」(岩波新書)には、「米側の戦後憲法の準備研究は、日本の戦前の憲法論の調査にまで及ぶ周到なものだった」という記述があります。問題は憲法制定時の状況を掘り起こして、「そのときからの平和主義を守れ」とか、逆に「米国による押し付けだから改正する」ではなく、あの当時、想定していなかった国際情勢が生まれた今の状況の中で、日本をどう守っていくか、憲法との関係をどう考えるかにあります。

 北岡伸一氏は「安全保障の問題では、何かをすることのリスクばかりが語られ、しないことのリスクは語られない。一方だけを取り上げ、・・・する恐れがある、という言い方は避けるべきだ」と指摘しています。米国の力も相対的に低下し、同盟国の協力強化が求められ、それがなければ、米国内の世論の支持も得られません。日本自身には、単独で自国を防衛する力はありません。一方で中国は強大な軍事国家をめざし、北朝鮮はなにをしでかすか分らない軍事国家です。この世界に日本しか存在しないなら、朝日の愛する「一国平和主義」もいいでしょう。

 オピニオン欄に作家の小林信彦氏が「ずっと戦争の中にいた 少年がみた敗戦と戦後」という長文の主張をしています。「戦後、もっとも暗いゴールデン・ウイークだと感じている」といいます。「安倍首相は列強国になりたいとあせっている。特定秘密保護法を作り、他国の軍隊と協力して、海外でも戦争できるようにする。原発関連ででるプルトニウム保有で、核武装に備える」などなど。この作家の想像力はどんどんと膨らみ、安倍首相は驚いているでしょうし、作家は安全保障のことを語るのに向いていないと、わたしなどは思ってしまいます。朝日が罪つくりなのは、政治漫画です。「やく みつる」さんが、安倍首相をソバ屋の出前に仕立て上げ、「集団的自衛軒です。お待ちどおー」といって、出前箱から戦闘機、戦車、兵隊が飛びだし、海外のどこかを襲撃している様子を描いています。

 集団的自衛権を相手国に戦争を仕掛けさせない抑止力とする、軍事紛争が発生したら同盟国が協力して撃退する、というのが今回の議論の本質でしょう。それを、日本がいよいよ海外で戦争をはじめる準備に入ったいうと、信じてしまうひともいるかもしれません。メディアの責任は重いのです。主要国では、どこでも真剣にやっている安全保障の議論が、日本では「戦争準備」にすり変わるのですね。(おわり)
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