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2014-05-16 10:06

(連載2)軍事力がのさばる時代への備え

中村  仁  元全国紙記者
 まず、軍事力から考えましょう。日本国際フォーラム評議員で、ロシア社会論が専門の袴田茂樹氏が5月1~2日付けの本欄「議論百出」への投稿「ロシアは孫子の兵法で見事に勝利」で鋭い指摘をしているのが目にとまりました。「クリミヤの併合、ウクライナ東部、南部の危機で、あまり論じられていないことがある。ウクライナ軍がまったく無力だったということだ。10万人でも、優れた装備と訓練を受けたウクライナ軍が存在していたら、ロシアは国際法を破れなかった」という主旨です。「クリミヤの自警団なる武装組織、その中心にロシアの特殊部隊がいた」とも書いています。後段については、よく言及されます。前段の「無力なウクライナ軍」というところが重要です。そうか、軍事力の備えがあれば、ロシアの侵略を阻止できたのか。なるほど。

 袴田氏はロシア紙に載ったロシアの軍事問題専門家の「驚くほど率直な見解」を読んだといいます。「今日の世界においても、国際法でなく、軍事力こそ決定的な意味を持つ。軍事力の削減はウクライナのように、結果的に高くつく」と、書いているというのです。「なぜ、わざわざそのような刺激的な主張をしたのだろうか。余計なことを言ってくれるものだ」ですね。軍事力の行使宣言なのかもしれません。実際にそうなったのですから、不愉快に思ってばかりいられません。

 ウクライナとの連想でいうと、「フィリピンもそうなのだ」となります。中国が尖閣ばかりでなく、南シナ海で傍若無人の振る舞いを続けています。注目されるのは、米国がフィリピンとの新しい軍事協定に署名し、アジア復帰の方針を示したことです。米軍はフィリピンをかつて軍事的拠点にしていました。冷戦終了後、米軍は駐留延期を拒否され、フィリピンの反米基地感情もあって、1992年までに撤収しました。その「力の空白」をついたのが、海洋権益の拡大を狙う中国でした。新聞記事によると、「フィリピンは潜水艦も戦闘機も保有していない。中国に対抗手段をとれない」といいます。そこまで無防備になっているとは知りませんでした。鳩山首相が1年で退陣してくれてよかったですね。「米軍基地を県外に、できれば海外に」と公約した鳩山首相の単純、素朴な平和理念を思い起こします。

 南シナ海では、中国が石油掘削をはじめ、ベトナムが反撃に出ています。今は、双方の船が放水銃で放水したり、船同士が体当たりしあったりしています。水鉄砲、海の騎馬戦の段階ですね。中国は挑発を続け、ベトナムに先に軍事力を行使させ、それを口実に軍事的反撃に出る機会をうかがっているのかもしれません。軍事的対立に突入すれば、ベトナム側に勝機はないでしょうね。(つづく)
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