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2014-05-24 14:34

(連載1)日本は戦略的思考を持て

中村  仁  元全国紙記者
 5月22日のニュースを読むと、現在の国際情勢、各国の国内情勢が総覧できます。中国とロシアが米国に対する対抗軸を作ろうとしています。世界秩序は分裂、拡散の方向に向かっています。日本国内では、原発や基地問題で裁判所が独走しています。タイでは国軍が戒厳令をひき、報道規制の強化を始めるなど、国家の一体感を失いつつある国が増えているようです。独裁者に近いようなトップが国をぐいぐい暴走させている国家主導型の国、国の一体感が弱りつつある民主主義、市場経済国家、そしていつまでたっても混乱から抜け出せず経済的発展から取残されている国など、いくつかに色分けできるでしょう。結論から申せば、こういう時代こそ日本は、特に安全保障について戦略的思考を持たなければならないということです。

 21日の新聞各紙の社説は、読売も朝日も毎日も、大飯原発の訴訟で福井地裁が再稼動差し止めの判決を出したこと、厚木基地の騒音訴訟で横浜地裁が自衛隊の夜間飛行の禁止の判決を出したことを取り上げています。国際情勢よりも、先ず身近な国内問題に読者は関心を持ちますから、こういうテーマの選択をしたのでしょう。司法の問題では、特に地裁レベルで、常識に欠ける裁判官や常識に欠ける判決が目立ち、特に福井地裁の場合はそうでしょうから、控訴審以降この判決はくつがえるでしょうね。この日のニュースのなかでは、そういう国内問題より、やはり中ロの緊密化がもっとも重大なできごとでしょう。国際情勢に敏感な日経が、やはり「中ロが目指す国際秩序に漂う危うさ」との見出しの社説で、「他国の内政干渉、一方的な制裁への反対を打ち出した」と指摘しつつ、「中ロは他国をけん制するだけで、自らを省みていない」と批判しています。「圧倒的に強大な軍事力を持つ両国が、その力を誇示してみせた」とも、指摘しています。

 ここで、最近、読み返した孫崎亨氏(元外務省国際情報局長)の「日米同盟の正体ー迷走する安全保障」という本から、同感した点を紹介します。この人の指摘は思い込みがありすぎるとか、生の情報より文書の分析に基づきすぎているという批判もあります。それでも参考になる点は少なくないでしょう。米国人がいう日本人の安全保障感覚について拾い読みします。「日本人の話を聞いていると、防衛という概念が存在していないようだ。」、「日本人は安全保障の問題を欧米人とは同程度には、戦略的に考えていない。」、「日本の安全保障政策は米国人がシナリオを書く必要がある。」、「世界の多くの国民は、外国に支配されれば、支配された国民がいかに悲惨な状態に置かれるかを知っている。日本は米国の占領期を除いて、外国の支配をほとんど受けていない。」、「権謀術数は指導者になくてはならない。」

 日本人が読むと、不快なことを言ってくれるねと感じながらも、そうなのだろうなという指摘がいくつも出てきます。ここで中ロの動きに戻ります。上海で習近平国家主席とプーチン大統領が首脳会談を行い、両国の戦略的関係の強化、貿易の拡充、ロシアの天然ガスの対中供給の開始などの共同声明を発表し、「蜜月を演出、米の圧力に対抗」などと報道されています。上海でアジア相互協力信頼醸成措置会議の第4回首脳会談が開かれたのを機に、両首脳が会ったのです。会議では習氏が演説し「アジアの安全はアジアの国民によって守られなければならない」、「中国はこの会議の役割を向上させ、アジアの安保協力の新局面を開く」、「領土主権、海洋権益争いの平和的解決に尽力する」、「各国の主権、領土を尊重し、内政干渉すべきではない」と語りました。よくまあ言ってくれるね、ですよね。中国は他国との領有権争いでは、平和的解決どころか、実力行使、一方的な権益拡張に懸命ですよね。言行不一致を平気で唱えます。それが中国のやりかたなのでしょう。(つづく)
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